毎月が俳句年鑑! 前月に刊行された俳句結社誌・同人誌の最新号から「(最大)7句」を推薦いただき、掲出するコーナーです。このページの句のなかから、推しの一句を選んでご鑑賞いただく読者参加型コーナー「コンゲツノハイクを読む」は、6月20日締切です。どなたでもご参加いただけますので、詳しくはリンク先をどうぞ。来月分のコンゲツノハイク(6月30日締切)については、こちらのフォームからご投稿ください。
コンゲツノハイク 2023年6月
(2023年5月刊行分)
今月の参加結社(30)=「秋草」「いには」「稲」「伊吹嶺」「炎環」「円虹」「火星」「かつらぎ」「銀化」「銀漢」「雲の峰」「櫟」「澤」「磁石」「秋麗」「青山」「鷹」「たかんな」「橘」「田」「天穹」「南風」「濃美」「ふよう」「ホトトギス」「街」「松の花」「森の座」「雪華」「楽園」
「秋草」(主宰=山口昭男)【2010年創刊・兵庫県神戸市】
<2023年6月号(通巻162号)>
苗代にいつもの時間いつもの人 山口昭男
茹卵むいて桜を守りにけり 渡辺一二三
一礼に僧のまじれり種選 松田晴貴
涅槃会の烏がしんとしてをりぬ 高橋真美
螺子穴に螺子あそびだす豆の花 常原拓
亀鳴いて無宗教なる男かな 小鳥遊五月
火少しけむりに遅れ毛虫焼く 舘野まひろ
「いには」(主宰=村上喜代子)【2005年創刊・千葉県八千代市】
<2023年5月号(通巻177号)>
一生の厄の数ほど飛花落花 村上喜代子
蔵書には夫の歳月霾ぐもり 木下洋子
木の芽和母の味にはどこかまだ 横田尚美
朧なるホーム私を置き去りに 田中麻衣
はくれんの白増す一点の錆に 滝口滋子
「稲」(主宰=山田真砂年)【2021年1月創刊】
<2023年5月号(通巻16号)>
囀りや耳の大きな子が生まれ 上田信隆
人上手くよけられぬ日や涅槃西風 飛田小馬々
遊具みなどこか錆をり木守柿 伊藤 翠
フィレンツェに買ひし手袋空の色 張本弘子
書込みの多き古本春の月 久保千恵子
春雷やすこし派手目の傘で出る 小見戸 実
キラキラな名前が並ぶ書初展 相澤美佐子
「伊吹嶺」(主宰=河原地英武)【1998年1月創刊・愛知県名古屋市】
<2023年5月号(通巻299号)>
割れやすきマイクの声や目借時 河原地英武
妻に切る一番咲きのチューリップ 栗田やすし
音狂ひたるウクレレや木の芽時 渡辺慢房
啓蟄や真二つに開く旅鞄 山田万里子
出番待つ地下アイドルの着膨れて 加藤剛司
雛流す舞妓袂を濡らしけり 武田稜子
仏壇に二つ供ふる寒卵 杉浦ゆき子
「炎環」(主宰=石寒太)【1989年創刊・埼玉県志木市】
<2023年5月号(通巻515号)>
春や春AI俳人一茶君 石寒太
謎解きのスタンプラリー梅の花 中村朔
老人を探すビラ古り霾ぐもり 河内協子
大きな家の大きな影の冬すみれ 関根誠子
弁当箱替へし工場長の春 岸ゆうこ
いのち短し人間も風花も 添田勝夫
すみれ草先に逝かれてしまひけり 丑山霞外
「円虹」(主宰=山田佳乃)【1995年創刊・兵庫県神戸市】
<令和5年6月号342号>
末黒野の果て大淀の水明かり 田中祥子
野遊や老いても母と娘どち 小林志乃
よもぎ餅吉備野の色をなつかしむ 木村恵子
あかときのあれは椿の落つる音 生嶋わこ
小さき手に覚えし数の土筆かな 永瀬千惠子
閑かなる瀬戸の残照鳥雲に 松田美智子
受験票鉛筆五本大試験 山本依子
「火星」(主宰=山尾玉藻)【1936年創刊・大阪府大阪市】
<2023年5月号(通巻1000号)>
清明の大空仰ぐものわすれ 山尾玉藻
一すぢの水脈開きゆく山の春 坂口夫佐子
積雪の無音の町を列車の灯 蘭定かず子
頬杖のはつたと炬燵出でひとり 湯谷良
永き日や眉墨ひかず古ぼけて 山田美惠子
篳篥に脚をたためる春の鹿 林範昭
ボルダリングの壁の被さる余寒かな 藤田素子
「かつらぎ」(主宰=森田純一郎)【1929年創刊・兵庫県宝塚市】
<2023年5月号(通巻1121号)>
バカラック弔ふ春の雨となる 森田純一郎
もうひとたび吹雪く花見て去なんかな 平田冬か
おぼろ夜の後ろから来る影法師 村手圭子
春愁や言の葉の棘まだ抜けず 清水洋子
暗渠へと門前町の雪解水 福賴聡子
冬牡丹男結びの被せ藁に 本多悠天
ことさらに外股歩き追儺鬼 吉川やよい
「銀漢」(主宰=伊藤伊那男)【2011年創刊・東京都千代田区】
<2023年6月号(通巻148号)>
竜天に登る鱗を散華とし 伊藤伊那男
何かしら失せし気のする雛納め 長谷川千何子
貝寄風や灘より出でし下り酒 塚本一夫
けふの酒治聾酒と言ひ許さるる 北川京子
針供養足踏みミシン今も尚 田中道
涅槃会の雨や歎きを流すほど 渡辺花穂
三寒の小路四温の大通り 白井飛露
「銀化」(主宰=中原道夫)【1998年創刊・東京都港区】
<2023年6月号(通巻297号)>
春ショール風をデザインしたといふ 中塚健太
存うて修二会の火の粉浴びてをり 平石和美
仰向けに置けば寄居虫顔を出す 利根川博
白魚の目に酢醤油の沁みてをり 恩田富太
誤植てふ神の悪戯初桜 栗山麻衣
散る花の入り口となるカーブミラー 渡辺悦古
日に干して日影もまざる白子干 三田いづみ
「雲の峰」(主宰=朝妻力)【1989年創刊・2001年結社化・大阪府茨木市】
<2023年5月号(通算383号)>
のんどりと海の県道てふフェリー 酒井多加子
錆兆す薬研に春の塵少し 原 茂美
花冷や寺に伝はる三行半 冨士原康子
諸子焼く熾火の勢宥めつつ 伊藤 月江
陵を左右に古道の青き踏む 松本すみえ
仏飯に足らふほどなる土筆摘む 浅川 悦子
天も地もどこかが緩み二月尽く 田中 幸子
「櫟」(主宰=江崎紀和子)【1993年創刊・愛媛県東温市】
<2023年5月号(通巻356号)>
涅槃図絵啼きごゑたてぬへびのゐる 江崎紀和子
白魚の一途なまでの瞳かな 宍野宏治
ホッピーの黒白まよひ初三十日 黒木慶英
脛あまた足湯に並び枝垂梅 合志伊和雄
白に白重ねてあをき今朝の雪 荒井智子
春霖や骨格だけのアーケード 松田六呉
春を待つ湯上がりの子の蒙古斑 種谷良二
「澤」(主宰=小澤實)【2000年創刊・東京都杉並区】
<2023年5月号(通巻278号)>
父死後の父が寝息や山枯るる 小澤實
クエタ・ロナ・ロント・クエクト冬銀河 望月とし江
メリーゴーランドの豚は金色春の風 馬場尚美
パイプ椅子がたつく席に卒業す 宮川それいけ
犬橇に振り落とされて橇を追ふ 信太蓬
きつね面とらず餅撒く午まつり 三好忠士
借り物競走「美女」と叫べば五人応ふ 町田無鹿
「磁石」(主宰=依田善朗)【2021年1月創刊・埼玉県蓮田市】
<2023年5・6月号(通巻15号)>
からだからによきによきと爪春動く 依田善朗
枯草に薬莢二つ何撃ちし 渡邊りつ子
兄よりも速き妹風光る 林 瑞夫
春帽子きりんの顔の降りてくる 吉田祥子
雪達磨百の面相見せ溶くる 篠崎央子
大寒の腰に重たき釘袋 飯田冬眞
束の間の日輪にじむ薄氷 河野絢子
「秋麗」(主宰=藤田直子)【2009年創刊・神奈川県川崎市】
<2023年5月号(通巻152号)>
花換まつり幼さのこる巫女の頬 藤田直子
春惜しむ雨を歩くといふことも 黒澤麻生子
静やかに魚道を下る花筏 田沢健次郎
いにしへの闇燃やしけりお水取 後藤信雄
蛇穴を出づ夢みることにあきあきし 東蕾
満開の花房欲しき嬰の指 津國紅
朧夜のロッカーから洩れスマホ音 神谷美津子
「青山」(主宰=しなだしん)【1982年創刊・神奈川県横浜市】
<2023年5月号(通巻486号)>
願ひごと一つ叶ひぬ春近し 山崎ひさを
大麦のための大地のつづきけり しなだしん
耳の中熱くなりたる麦の秋 井越芳子
妻寝かせ失せ物探す初昔 南井俊輔
父の煮るぶつ切り鱈の醤油色 谷川理美子
詰め合うて子を座らせる暖房車 原 美鈴
旅立ちの朝の小さな雪だるま 井手下由美子
「鷹俳句会」(主宰=小川軽舟)【1961年創刊・東京都千代田区】
<2023年6月号>
思ひ出は思ふほど濃し母子草 小川軽舟
何人(なにびと)もあふぐほかなき桜かな 加藤静夫
惜春や再びは来ぬ同じ波 明地敬子
蓮如忌や流星長き尾をひける 菊池雅顕
探梅や空たっぷりと見て帰る 渡辺柊子
差しで飲みレシート長し春の雨 竹本光雄
夏柳銭湯の客あたま剃る 矢島広
「たかんな」(主宰=吉田千嘉子)【1993年創刊・青森県八戸市】
<2023年5月号(通巻365号)>
隠沼の淀みを抜けて葦の角 小野寺和子
約束のなき祭日の春炬燵 黒田長子
もの言はぬ子となり久し受験生 三野宮照枝
節分の鬼の加はる夕の膳 西浄さえ
天平の礎石を囲む名草の芽 小川三胡
春泥に足を取られし一張羅 滝沢鷹太郎
木の家の声やはらかし春隣 川村久代
「橘」(主宰=佐怒賀直美)【1978年創刊・埼玉県久喜市】
<2023年6月号(通巻546号)>
初蝶の樹よりひとひら落ちて消ゆ 中山明代
しあはせな主婦の顔して花仰ぐ 斯波広海
水源の小さき祠や木の根明く 髙田良子
たんぽぽへ卵サンドの封を切る 野村のり恵
酒蔵の井戸は湧き水木の芽張る 髙嶋あけみ
エプロンの似合ふ嫁なり花菜漬 坂口朋子
足元を囲む土筆や新担任 田島公樹
「田」(主宰=水田光雄)【2003年創刊・千葉県市川市】
<2023年5月号(通巻243号)>
足下にどすんと落ちて紅椿 佐藤千恵子
すくと立つ鶏冠の数や春の風 草子洗
鳥の名を探す脳や水温む 間 恵子
軽石の吐き出すあぶく日永し 上野犀行
肩ふつと力の抜けて初桜 笠原小百合
二階もの干一階しだれざくらかな 平野山斗士
流氷の着岸を訊く寿司屋かな 橘 花優
「天穹」(主宰=屋内修一)【1998年創刊・東京都渋谷区】
<2023年6月号(通巻304号)>
標本木を囲む一人に佐保姫も 佐々木建成
堺へと菜の花蝶と化し急ぐ 青木遵子
レタス割るパリッと風の音立てて 川手和枝
引力を確かめてをり揚雲雀 田中国太郎
八十は余生の途中桜咲く 渡辺ごろう
ネクタイを結ぶ練習春の夜 曽我晶子
牛たちのモンローウォーク草青む 前川尚子
「南風」(主宰=村上鞆彦)【1933年創刊・東京都葛飾区】
<2023年6月号(通巻955号)>
夏蜜柑誰も採らねばどこにでも 原隆三郎
一つ一つ貌見て薯を植ゑにけり 新治 功
うすらひのつかれゆすられ忘れらる 森あおい
花の下皮一枚の嬰眠り 岡辺明代
屹然と塔雑然と春の雲 梅田実代
海風に失ひながら葺き替ふる 板倉ケンタ
閉店の本屋の書皮や花の雨 陰山 恵
「濃美」(主宰=渡辺純枝)【2009年創刊・岐阜県岐阜市】
<2023年6月号(通巻171号)>
スカートのふくらんでくる花の風 渡辺純枝
梅一輪今日も介護の中にをり 田中雅子
画壇には属さぬと言ふ春火鉢 関谷恭子
春立つや母と私の予定表 西杉佳子
踏青や手毬のやうな犬連れて 横溝和代
あたたかしリュック水筒並びをり 足立あい
永き日の背戸あけ放つ米問屋 辻 斉
「ふよう」(主宰=千々和恵美子)【2005年創刊・福岡県遠賀郡】
<2023年5月号(通巻99号)>
エレベーター一気に花の天守閣 千々和恵美子
カルデラの風の平らや鯉幟 安倍真理子
よき声の鳥をはなさぬ夕桜 貴田将子
自転車の少女一列花の中 渡辺味蕾
潮鳴りのしだいに近く鼓草 門坂悦代
一匹の獲物引き合ふ雀の子 藤本真弓
地下鉄の延伸開業花満開 明石和夫
「ホトトギス」(主宰=稲畑廣太郎)【1897年創刊・東京都千代田区】
<2023年6月号(通巻1518号)>
梅が香や庭への扉開くより 稲畑廣太郎
細やかに地を浸したる春の雨 花川和久
ガラスペンポップな青の浅き春 竹岡俊一
朝一つ鉢転がつて猫の恋 平尾昌子
曇り空でも心には春の空 伊東法子
明けてくる空の孤独に冬桜 伴統子
おいどあぶりよしと祖母言ふどんどかな 小寺美紀
「街」(主宰=今井聖)【1996年創刊・神奈川県横浜市】
<NO.161>
剪定の軍手に貰ふ笹団子 今井 聖
図書委員同士で無口春の風 髙勢祥子
鳩胸と猫背の姉妹雛あられ 高橋麗子
春炬燵どの封筒も醤油の香 竹内宗一郎
春の蠅ぴぴと目玉の飛びたてり 松野苑子
只酒は飲むなの式辞卒業す 山田富士夫
椎茸のひだの密なる春愁 やまねよしこ
「松の花」(主宰=松尾隆信)【1998年創刊・神奈川県平塚市】
<2023年5月号(通巻305号)>
大き手の力士やさしく豆を撒く 松尾隆信
春夕焼け捨ててきしものみな赤く 鈴木大輔
台ヶ岳仔牛の雪形上向きに 宮之原敏恵
かんあけやあともうすこしもうすこし 木原邦彦
餌を撒けば白鳥号に白鳥来 興梠隆
足元に新戦前や多喜二の忌 しかい良通
愛交はしたれば雀も春の鳥 伊藤真理子
「森の座」(代表=横澤放川)【2017年創刊・東京都文京区】
<2023年5月号>
寝釈迦(ののさん)に花あげませう子供たち 横澤放川
建国日声なき声を聞く力 中村弘
紅梅の咲いて嬉しき鬼瓦 斎藤寛子
初場所や退く間をためて押し勝てり 竹内伸子
握り返し妻手術(オペ)室へ冬灯 佐藤一竿
大仏の中の地獄絵年新た 角田貴彗
赤提灯吊つて裸木喜ばす 家登みろく
「雪華」(主宰=橋本喜夫)【1978年創刊・北海道旭川市】
<2023年6月号>
祭壇の裏の骨組みまで朧 橋本喜夫
下萌を嚙んで水車の歯車は 高木宇大
深春野の韻あつめて牛の耳 鈴木牛後
初蝶が朝敵のやう去つてゆく 土井探花
花冷や流れぬものに堀のみづ 鈴木総史
一枚の萵苣暗がりを濡らすため 五十嵐秀彦
母の日の母の代わりの祖母百五歳(ひゃくご) 福井たんぽぽ
「楽園」(主宰=堀田季何)【2021年創刊】
<第3巻第1号(通巻13号)>
精神科のしろばらすこしきいろ 奥村京水
永き日やトンボの描く同心円 吉川わる
鳥の巣に雛の踏みをる骨の屑 姫野理凡
顔のないわたしが産んだ無人島 月波与生
学歴を崇める君へ春火鉢 亘航希
どりやつととろりなあたたかいをのんでがらすにはいつてゐた 横井来季
煙草くさく香水くさく酒くさく 佐藤知春
【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2023年6月30日
*対象は原則として2023年6月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2023年7月5日
◆投稿先
以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/
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