【冬の季語=三冬(11〜1月)】落葉
落葉の有名な俳句といえば、
むさしのの空真青なる落葉かな 同
落葉の有名な短歌といえば、
たとえば君 ガサッと落葉すくふやうにわたしを攫って行ってくれぬか 河野裕子
が思いつきます。
落葉樹が「裸木」「枯木」になるまで、落とす葉、あるいは落ちた葉っぱが、「落葉」。
「名の木落葉」「落葉雨」「落葉時雨」「落葉時」「落葉掃く」「落葉掻く」「落葉籠」「落葉焚く」など、さまざまな派生季語でも詠まれますし、「柿落葉」「櫨落葉」「朴落葉」「銀杏落葉」のように、個別の植物をもって詠まれることも多々。
原則「らくよう」とは読みません。
春の落葉は「春落葉」、夏の落葉は「夏落葉」。
【落葉(上五)】
落葉して遠く成(なり)けり臼の音 与謝蕪村
落葉すやこの頃灯す虚空蔵 芝不器男
落葉の夜歌仙これより恋の部へ 飯田龍太
落葉道黙をもて人黙らしむ 藤井あかり
落葉踏むことなら教え上手の母 神野紗希
【落葉(中七)】
追うて来る落葉の音にふりかへり 本田あふひ
啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々 水原秋櫻子
侏儒たち月夜の落葉ふむならし 金尾梅の門
静臥ただ落葉降りつぐ音ばかり 成田千空
一枚の落葉となりて昏睡す 野見山朱鳥
夫恋へば落葉音なくわが前に 桂信子
天窓に落葉を溜めて囲碁倶楽部 加倉井秋を
デモすすむ恋人たちは落葉に佇ち 宮坂静生
世界の謎みえず 落葉する正午 宇井十間
【落葉(下五)】
留守のまにあれたる神の落葉哉 松尾芭蕉
吹き上げて塔より上の落葉かな 夏目漱石
むさしのの空真青なる落葉かな 水原秋櫻子
いまは床屋となりたる友の落葉の詩 寺山修司
地の温み空のぬくみの落葉かな 吉田鴻司
それまでのことこれからのこと落葉して 中原道夫
くすぶりてゐしが一気に火の落葉 檜紀代
アカシアのアルハンブラの落葉踏む 永澤謙
起きて寝て起きて赤子に落葉の窓 村上鞆彦