【春の季語】チューリップ

【春の季語(三春=2月〜4月)】チューリップ

【ミニ解説】

ユリ科チューリップ属の球根草。小アジア原産、トルコで改良されたものがヨーロッパで広まり、オランダを中心にさらに改良された。日本には江戸末期に輸入され、当時は「鬱金香(うっこんそう)」と呼ばれていた。徐々に家庭に広まると、1919年から本格的な生産が始まる。

石川啄木に次の短歌がある。

起きてみて、
また直ぐ寝たるなる時の
力なき目に愛でしチユリツプ!

与謝野晶子にもこのような詩がある。

チユウリツプ
今年も五月、チユウリツプ、
見る目まばゆくぱつと咲く、
猩猩緋に咲く、黄金(きん)に咲く、
紅と白とをまぜて咲く、
人に構はず派手に咲く。

チューリップと言えば赤か黄色か。3000を超える品種があり、白、橙、紫、まだら模様など多くの種類がある。「鬱金香」のほか、「牡丹百合」とも。


【チューリップ(上五)】
チューリップ影もつくらず開きけり 長谷川かな女
チューリップ花びら外れかけてをり 波多野爽波
チウリップ散って一茎天を指す 貞弘衛
チユーリツプ赤の一日終りけり 辻井のぶ
チューリップ喜びだけを持つてゐる 細見綾子
チューリップ校歌はいつも高らかに 中山純子
チューリップ花屋の外に暮れにけり 谷さやん
チューリップ体は土に埋まりけり 御中虫

【チューリップ(中七)】
農園の鬱金香(チユーリツプ)競ひ昼の月 永井龍夫
ものの芽の全きチューリップとなりぬ 星野立子
欠席の詫チユーリツプ十二本 後藤比奈夫
窓の下チユーリツプ聯隊屯せり 中村秀好

【チューリップ(下五)】
ベルギーは山なき国やチューリップ 高浜虚子
鶯の高音ひねもすチューリップ 川畑茅舎
遺作展会場広しチューリップ 中村汀女
吾子の絵の家より大きチューリップ 佐藤半三
ほめられもせず雨の日のチューリップ 伊佐新吉
ときめきのなき二人にもチュウリップ 細川久夫
新しき街に寺なしチューリップ  小川軽舟
軋みつつ花束となるチューリップ 津川絵理子



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