冬の季語

【冬の季語】冬桜

【冬の季語=三冬(11月〜1月)】冬桜

俳句では冬に咲く「桜」を総称的に「冬桜」または「寒桜」と呼び習わしている。

品種としての「フユザクラ」は、「ヤマザクラ」と「マメザクラ」が自然に交配してできたものとされ、伊豆半島と房総半島には自生も見られる。主な開花期は11~12月と4月の年2回だが、その間も細々と咲き続ける。そのため、季節外れのサクラとして町おこしなどに積極的に利用されている。特に桜山公園のフユザクラは「三波川の冬桜」として名高く、国の天然記念物に指定。

冬に咲く桜は他にもジュウガツザクラ、カンヒザクラ、カンザクラ、コブクザクラなどがある。

しばしば歳時記には「寒桜は寒緋桜のこと」という記載があるが、厳密にいえば、品種としての「カンザクラ」は「カンヒザクラ」とヤマザクラ系統の「サトザクラ」(あるいはハヤザキオオシマ)の雑種とされるバラ科の落葉広葉樹。江戸時代後期から観賞用として植栽されてきた。


【冬桜(上五)】
冬桜失禁の父慰めて 今井 聖
冬桜三十畳を拭きあげて 夏井いつき
冬桜猫消えてゐる倉庫裏 岡田由季

【冬桜(中七)】

【冬桜(下五)】
うつし世のものとしもなし冬桜 鈴木花蓑
人の世のしばらく遠し冬ざくら 鷲谷七菜子
青空に消えてしまひし冬ざくら 岸田稚魚
日は未形(みぎょう)色さめざめと冬桜 山田みづえ
はなびらの小皺尊し冬ざくら 三橋敏雄
舞うほどの花びら持たず冬桜 宇咲冬男
梅よりも白しと思ふ冬桜 後藤比奈夫
留守電に在りし日の声冬桜 小谷迪靖
古きよき厠のにほひ冬桜 小川軽舟


  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 【春の季語】鴨引く
  2. 【冬の季語】冬来たる(冬来る)
  3. 【冬の季語】年逝く(年行く)
  4. 【秋の季語】運動会
  5. 【冬の季語】寒晴
  6. 【秋の季語】花野/大花野
  7. 【秋の季語】秋桜
  8. 【春の季語】沈丁花

おすすめ記事

  1. 花言葉なき一生を水中花 杉阪大和【季語=水中花(夏)】
  2. 冬と云ふ口笛を吹くやうにフユ 川崎展宏【冬の季語=冬(冬)】
  3. 冬麗の谷人形を打ち合はせ 飯島晴子【季語=冬麗(冬)】
  4. 牛乳の膜すくふ節季の金返らず 小野田兼子【季語=節季(冬)】
  5. 【冬の季語】水鳥
  6. 誰をおもひかくもやさしき雛の眉 加藤三七子【季語=雛(春)】
  7. しかと押し朱肉あかあか冬日和 中村ひろ子(かりん)【季語=冬日和(冬)】
  8. 【夏の季語】虹
  9. 銀河系のとある酒場のヒヤシンス 橋 閒石【季語=ヒヤシンス(春)】
  10. 神保町に銀漢亭があったころ【第2回】小滝肇

Pickup記事

  1. こほろぎや女の髪の闇あたたか 竹岡一郎【季語=蟋蟀(秋)】
  2. 笠原小百合の「競馬的名句アルバム」【第4回】2010年/2011年エリザベス女王杯
  3. 【春の季語】鷹鳩と化す
  4. 東京の白き夜空や夏の果 清水右子【季語=夏の果(夏)】
  5. 杜甫にして余寒の詩句ありなつかしき 森澄雄【季語=余寒(春)】
  6. 来たことも見たこともなき宇都宮 /筑紫磐井
  7. 【夏の季語】扇風機
  8. 菜の花や部屋一室のラジオ局 相子智恵【季語=菜の花(春)】
  9. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第42回】 山中湖と深見けん二
  10. 【夏の季語】葉桜
PAGE TOP