「鳰(かいつぶり)」の古名。全長は25-29cmほどの「水鳥」である。
歴史的仮名遣いでは「にほ」。
「におどり」ともいうが、冬は子連れの群れも多く見かけるので、「鳰の子」が詠まれることもある。
「鳰の巣」=「鳰の浮巣」は、夏の季語。アシの間などに作られ、それが水に浮いているように見えるので、和歌などでは、よるべないあわれなものとして詠まれてきた。
【にお(上五)】
鳰がゐて鳰の海とは昔より 高浜虚子
鳰の声夕づく湖の衰へぬ 角川源義
鳰沈みひとりひろがりゐる水輪 石井とし夫
潜る鳰浮く鳰数は合ってますか 池田澄子
鳰の背をこぼれ鳰の子泳ぎだす 岡田由季
【にお(中七)】
望遠鏡離さず鳰と答へけり 広渡敬雄
【にお(下五)】
箸墓古墳の底見てきしか鳰の顔 渡辺花穂
声はいつ言葉となるや鳰くぐる 小林千史