
僕よ寒くて僕のどこかを掴んでゐた
大塚凱
月に一度、歯科医院に定期検診に通っています。数年前に担当医から指摘されて驚きました。
「歯の食いしばりが強いですね」
噛みしめが日常化すると、歯茎や歯に負担がかかり、肩こりや頭痛の原因にもなると言います。「噛む癖が直らないと、歯が割れたり、欠けたりするので、マウスピースをつけなきゃいけないことになるかもしれません」と先生。……それは良くない。
意識してみると、確かに日常的に奥歯に力が入っています。「あ!いかん、いかん。」と緩めるのですが、集中したり、緊張したり、寒かったりすると、やはり奥歯で「無」を噛みしめているのです。
家でテレビを見ながらくつろいでいるときに、家族から「なんで足の指丸めてるの?」と聞かれたこともありました。リラックスしているひとときなのですが、無意識に足の指をグーの形にしていたのです。私はアルマジロかダンゴムシのように、防御の姿勢を日常的に保ちたい性分らしいのです。
掲句は『或』(2025年5月・ふらんす堂刊)に掲載された大塚凱さんの一句。「僕よ」と自身への呼びかけで始まるのが印象的です。スポットライトが一条だけ射す舞台で展開される一人芝居の台詞のようでもあります。心細さ、焦燥感、危機感といった精神的な寒さまで見えて、身を固くしがちなアルマジロは共感したのでした。
知らぬうちに、防御の姿勢を取っている人、意外と多いそうです。お互い「大丈夫だよ」と声をかけあって、体制緩めていきましょう。
(白井飛露)

【執筆者プロフィール】
白井飛露(しらい・ひろ) (本名・聡子)
1977年、千葉県野田市生まれ。流山市在住。2010年「かぞの会」参加、2012年「大倉句会」参加。「玉藻」「銀漢」同人。俳人協会会員。
旅行雑誌の編集プロダクション、ゴルフ雑誌出版社勤務などを経て、(株)ウインダムにて展覧会や美術展のPRに携わる。一般社団法人10000日記念日代表。
2025年11月に初句集『輪郭』(朔出版)上梓。