【連載】岸田祐子の「句集ホロスコープ」【#10】『けむり』西原天気(西田書店、2011年)

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【今月の1冊/今月の1句】


世界ぢゆう雨降りしきる苔の恋
『けむり』西原天気
2011年10月25日 東京都・正午
太陽/蠍座、月/天秤座、水星/蠍座、金星/蠍座、火星/獅子座、木星/牡牛座、土星/天秤座、天王星/牡羊座、海王星/水瓶座、冥王星/山羊座


 『けむり』には、性質も要素も異なる天体同士を結びつけるアスペクト、クインカンクス(150度)が2つあります。このアスペクトは、異質なものを工夫して新しいものに作り変える力を持つとされます。革新の星、天王星は太陽の示すこの句集の範囲を決めず、境界を越えて広がろうとします。一方、拡大の星木星は内側に籠っていたい月を外へと解放させるように働きます。太陽と天王星、月と木星がそれぞれに作るクインカンクス(150度)はタイトルになっている「けむり」のようにどちらも外に向かって広がります。
 金星と水星のタイトなコンジャクション(0度)は美しい思考を表します。美しいものや楽しいものを扱う金星の感性によって選ばれた言葉は、思考や理論を管轄する水星によって再構築されます。この句集に収められた句群のどことなく遠い視線や洗練された佇まいはこのアスペクトが関係していそうです。
 さらに『けむり』は木星と冥王星が調和しています。発展を意味する木星と破壊と再生を司る冥王星のトライン(120度)のつながりには古くなってしまったもの、壊れてしまったものを修復やリメイクする力があります。『けむり』の装丁はとてもユニークで、いわゆる表紙がありません。背表紙部分は折が閉じられた糸が剥き出しになっています。本という古くからある形式を使ってどこまで遊べるかを試した一冊といえます。
    世界ぢゆう雨降りしきる苔の恋
 長い雨の季節がくると苔の恋が始まります。恋をした苔は小さな花を咲かせます。その花から溢れ出た胞子が雨に乗ってけむりのように散ってゆくのです。

岸田祐子


【執筆者プロフィール】
岸田祐子(きしだ・ゆうこ)
「ホトトギス」同人。第20回日本伝統俳句協会新人賞受賞。


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