
【読者参加型】
コンゲツノハイクを読む
【2026年6月分】
月末の恒例行事!「コンゲツノハイク」から推しの1句を選んで200字評を投稿できる読者参加型コーナーです。みなさんに未来の名句を探していただいています。今月は、9名の皆様にご参加いただきました。
新旧の破魔矢の鈴のすれ違ふ
大坪正美
「稲」
2026年5月号より
神社ではごくありふれた行為だが、改めて「受け取る」と「手放す」が同時に起こっていることの発見。古い破魔矢の鈴と新しい破魔矢の鈴が、持ち替えられる瞬間か、納所へ向かう途中か、かすかに触れ合う。その微かな音が、まるで一年と一年の引き継ぎのように響く。古い一年と新しい一年、去年の願いと今年の願い、あるいは過去の自分と現在の自分までもが、鈴の音に託されているように感じられる。ちりんと交替の音が鳴る。
(押見げばげば)
啓蟄や役者すつぽんよりぽんと
上村百香
「天穹」
2026年6月号より
すつぽんよりぽんと口ずさめばすつぽんぽんと裸が思い浮かぶ。美や芸で観客を魅了するのも役者だが、人間のどうしようもなさを見せるのも役者。人前で恥をかく仕事とも言える。舞台上で生まれ、生まれ変わる役者。啓蟄という季語と響きあい、春になり地上へ現れる虫達のように人も春になり生まれ、生まれ変われる。そんなことを役者の立つ舞台から教えられる。恥をかくことを恐れずにいつだって昨日の殻を脱いで生まれ変わりたい。
(貴田雄介/「台北俳句会」)
子に玩具買へぬくらしや啄木忌
田中康雄
「秋麗」
2026年5月号より
啄木の作品に悲しい玩具というのがあるようですね。
私事ですがかつて零細な町工場をしていた当時の貧乏時代を思い出しました。
週末に家族でショッピングモールに買い物に行った時に、世間並みに子供にアイスクリームくらいは食べさせてあげようとはしていましたが、頭の中ではいつもお金の計算をしていました。
周りの家族は皆、お金の心配などなさそうに遊具に乗せたり、買い物をしたりしていて、うちの子が不憫に思つていたのを思い出しました。
(慢鱚/「俳句大学」)
水を汲む音に音階しよしゆんかな
那須直美
「円虹」
2026年5月号より
春の浅い頃、だんだんと暖かくなるにつれて、日の色水の色にも、鋭い音から柔らかい音へとだんだんと切り替わって行く。そのことをコップの水か、或いは今は、余り見られなくなった井戸の水を汲む際に音階を感じられる。とても楽しい句。暖かくなる春を楽しみにしたウキウキ感が伝わる句である。
(夜寺耕太/「いつき組」)
上履は布の袋に葱の花
山口昭男
「秋草」
2026年6月号より
春、新入生を迎える小学校。それは成長の第一関門。家族の用意した布の靴袋と、迎える頭一つ分大きくなった二年生または上級生。葱坊主のように成長して飛び出たくりくりの頭は、こちらも二年なら上級生になったばかり。チョット困って「上履はこうして布の袋にしまってね」と昨年上級生に言われたように。
二年生でもそうでなくても、それは誇らしく、けれど戸惑い、中には泣き出しそうな顔の子もいるかもしれず。それを葱坊主ではなく葱の花として、その上級生側に視線を。
それはいつの時代にも、また、状況を違えてもある成長の順とその景色を見守る視線で、とても素敵な句と選ばせていただきました。(haruwo/「麒麟」)
花屑を付けてごろりと洋酒瓶
河原地英武
「伊吹嶺」
2026年6月号より
花屑を付けているのだから、お花見の宴席であろう。お花見に欠かせないのがお酒。乾杯用のビールに加えて、春らしいロゼワインや、お花見時期の限定ラベルなどの日本酒。しかし、ここに登場するのは洋酒瓶。この意外性が面白い。
(野島正則/「青垣」「平」「noi」)
後輩に後輩春のグリーンガム
中金稿
「鷹」
2026年6月号より
先日、3年ぶりくらいにガムを食べた。コンビニやスーパーの売り場でも、グミが優勢になり、ガムは追いやられている。わたしも家族もグミばかり食べている。この句を一読したとき、「グリーンガム」という言葉の懐かしさに胸が高鳴った。「春のグリーンガム」という言葉がキャッチーで耳に心地よい。「後輩に後輩」というシンプルな措辞で状況を端的に伝える。4月になって後輩にも後輩ができて、教えているシーンだろうか。あの頃みんなが食べていたグリーンガムが、読者の記憶を呼び覚ます装置になっている。
(千野千佳/「蒼海」)
花筏もう一押しの風を待つ
中山幸子
「銀化」
2026年6月号より
花筏の一部分に、水面が見えているところがあるのだろうか。それとも、何かの形になりそうに、ひとところに寄っている花筏だろうか。思い描く花筏は、花びらが重なり合い、層を成して厚みのある、桜色の濃い、水気の少ないものかもしれない。見ている間にも花びらは舞い散り、水面は少しずつ動き、いつまでも同じ状態にはとどまらない。花筏の変化していくさまをじっと見つめる眼差しがある。「もう一押し」の措辞が良い。上五の切れも効いている。
(弦石マキ/「蒼海」)
ガスタンクに環をなす足場卒業す
斎建大
「noi」
2026年5月号より
「環をなす足場」との簡潔な表現が素敵です。巨大な球体の表面に纏わりつくようにして巻き付くメンテナンス階段の景がとてもよく見えます。簡潔だからこそ想像の余地も出来、「卒業す」と相俟って、詩情が湧くのだと思います。圧倒的に大きな構造に対してか細くも外側から手を加えるための「足場」がぐるりと「環を」成して整っている様子には、無根拠な自信ではなく、未だ微力で不確かながらも、卒業してからこの先に向けた自分なりの「足場」を予感しているようにも思われます。
(小松敦/「海原」)

【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2026年6月5日
*対象は原則として2026年5月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2026年6月10日ごろ
◆投稿先 以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/
