【冬の季語】羽子板市

【冬の季語=暮・歳晩(12月)】羽子板市

毎年、12月17~19日の間、浅草の浅草寺境内には数十軒の羽子板の露店が並ぶ。

毎月18日は観世音菩薩の縁日。なかでも12月18日は、「納めの観音」と呼ばれ、特に参拝者が多かったが、浅草寺では、江戸末期頃より羽子板を売る店が多くなった。これは羽子突きの羽根が虫を食べるトンボに似ていることから、悪い虫(病気)を食べる、あるいは羽根の先端に付いている「豆」から、「まめに暮らすことができる」など、羽子板はもともと縁起物として扱われていたためとされる。

浅草の歳の市は、やがて「羽子板市」と呼ばれるようになり、現在は12月17日から19日までの3日間、境内に数十軒の羽子板を売る店が並ぶ。店主の口上と客とのやりとりは周囲の見物客も楽しませ、「師走」の浅草の風物詩となっている。

【参考】谷岡健彦「秋櫻子の足あと」【第12回】


【羽子板市(上五)】
羽子板市三日の栄華つくしけり 水原秋桜子
羽子板市あしたより立つ髷を結ふ 山口青邨
羽子板市一番星にずばり買ふ 渡辺恭子

【羽子板市(中七)】
うつくしき羽子板市や買はで過ぐ 高浜虚子
やはらかく押され羽子板市にゐる 北澤瑞史
いくさあれど羽子板市につれだてる 森光子
手を振つて羽子板市に紛れけり 岸本尚毅
更くる夜の羽子板市や灯の熱く 岩田由美
ひらひらと羽子板市についてゆく 堀切克洋

【羽子板市(下五)】
青空の一枚天井羽子板市 鷹羽狩行
雑踏を顔の流るる羽子板市 片山由美子


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