船旅に出たし波止場の四温かな 益岡茱萸【季語=四温(冬)】

船旅に出たし波止場の四温かな

益岡茱萸

 10代の頃、「少年の船」というプログラムに参加したことがあります。約1週間かけて東京港からグアムを大型客船で目指しました。参加の小・中学生たちは年代をミックスしたグループに分けられ、船上でさまざまなミッションに取り組みます。手旗信号、ロープの結び方のレッスンもありました。残念ながら、S・O・Sのサインも舫い結びも全く覚えていませんが、硫黄島の近くを航行するときに硫黄の匂いがしたこと、全く島影を見ない海域を船が行くときの、えも言われぬ心細さが印象に残っています。
 一方、大人のクルーズと言えば、毎晩ドレスアップして、フルコース。ビンゴゲームやダンスパーティー、映画やマジック鑑賞……老後のお楽しみというイメージがあります。
 掲句は益岡茱萸さん『雨の器』(2025年11月・ふらんす堂刊)に掲載。この句を、読んで、クルーズ船の旅に俳句の仲間たちと参加したら、ものすごく楽いのでは!? と思いました。移り変わる空や風や海の景色を楽しんだり、乗船客のひとりひとりを観察したり。毎晩、句会をして盛り上がりたい! 最近は船内のアトラクションに俳句教室も取り入れられているとか。俳句と船旅、結構相性が良さそうです。
 この句の〈波止場〉には、まだ気軽に船旅には出られない作者の立場も見えます。また〈四温〉にいつの日か船の旅が叶うという希望も。

白井飛露



【執筆者プロフィール】
白井飛露(しらい・ひろ) (本名・聡子)
1977年、千葉県野田市生まれ。流山市在住。2010年「かぞの会」参加、2012年「大倉句会」参加。「玉藻」「銀漢」同人。俳人協会会員。
旅行雑誌の編集プロダクション、ゴルフ雑誌出版社勤務などを経て、(株)ウインダムにて展覧会や美術展のPRに携わる。一般社団法人10000日記念日代表。
2025年11月に初句集『輪郭』(朔出版)上梓。



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