毎月が俳句年鑑! というわけで、前月に刊行された俳句結社誌・同人誌の最新号から「(最大)7句」を推薦いただき、掲出するコーナーです。このページの句のなかから、推しの一句を選んでご鑑賞いただく読者参加型コーナー「コンゲツノハイクを読む」は、4月20日締切です。どなたでもご参加いただけますので、詳しくはリンク先をどうぞ。来月分のコンゲツノハイク(4月30日締切)については、こちらのフォームからご投稿ください。
コンゲツノハイク 2023年4月
(2023年3月刊行分)
今月の参加結社(29)=「秋草」「いには」「伊吹嶺」「炎環」「円虹」「火星」「銀漢」「雲の峰」「櫟」「磁石」「秋麗」「澤」「青山」「蒼海」「鷹」「たかんな」「橘」「田」「天穹」「南風」「濃美」「ひろそ火」「ふよう」「ホトトギス」「街」「松の花」「森の座」「雪華」「楽園」
「秋草」(主宰=山口昭男)【2010年創刊・兵庫県神戸市】
<2023年4月号(通巻160号)>
割算に生まるる余り雪間草 山口昭男
鶯のこゑ石鹸は網の中 野名紅里
流氷が愛に定義を与へけり 野名紅里
冬の夜をアンモナイトのやうに寝る 高橋真美
スケートの停止はあとでかんがへる 水上ゆめ
初夢はひるすぎほどの白さかな 鬼頭孝幸
松咲いて神におほきな鼻の穴 田邊大学
「いには」(主宰=村上喜代子)【2005年創刊・千葉県八千代市】
<2023年4月号(通巻175号)>
一本の木でありし舟朧なり 村上喜代子
初曙命ふくらむごと目覚め 中津留正子
さつと来てささつと帰る子の新春 木嶋純子
都鳥橋の名前に物語 石井よしみ
物証のやうに手套の片つ方 梅津紀子
「伊吹嶺」(主宰=河原地英武)【1998年1月創刊・愛知県名古屋市】
<2023年3月号(通巻297号)>
押されゐて妻が遠くに初詣 河原地英武
少年の夢を聞きゐる初湯かな 栗田やすし
霜の夜や握り鋏の鈴の音 久野和子
年忘れ経理部長のファルセット 加藤剛司
惜敗の記事に焼芋包まれて 高柳杜士
落葉掃き了へて欠伸の用務員 野村和甚
繕ひの花型増えし冬障子 加藤三千子
「炎環」(主宰=石寒太)【1989年創刊・埼玉県志木市】
<2023年2月号(通巻512号)>
亡き父へ詫びのひと言初日記 石 寒太
電力を奪ふ戦力風冴ゆる 鈴木正芳
寒灯し三十五本のキャンドルよ 山口 繭
ミサイルの軌跡透明冬ざるる 丹間美智子
日向ぼこ文字なき絵本読み聞かす 萩尾亜矢子
跳箱は終生跳べぬ冬日影 植村公女
はこぶねのかたちにんらぶふゆのくつ 小関由佳
「円虹」(主宰=山田佳乃)【1995年創刊・兵庫県神戸市】
<令和5年4月号第340号>
何か爆ぜとんどの炎色裏返る 海輪久子
雨雫なべて光に春隣 三宅久美子
双六や二回休みの母の膝 大瀬俄風
初詣人の混み合ふ島渡し 水野繁勝
水仙や日の斑の中に咲き初むる 知覧由美子
年あらたいつもの場所の薬箱 水野由美
初諷経なむあみだぶは皆揃ふ 小林希素子
「火星」(主宰=山尾玉藻)【1936年創刊・大阪府大阪市】
<2023年3月号(通巻998号)>
置き配のアマゾンケース松明けぬ 山尾玉藻
神々は夜を遊びます雪こんこ 蘭定かず子
終弘法へ行きそびれたるエコバッグ 坂口夫佐子
片耳の受けとめてゐる冬の滝 山田美恵子
後悔を蹴散らしてゆく落葉道 藤田素子
病名を告げて詫びる子月冴ゆる 湯谷良
枯尾花除けて望遠レンズ出づ 小林成子
「銀漢」(主宰=伊藤伊那男)【2011年創刊・東京都千代田区】
<2023年4月号(通巻146号)>
吉野より八咫の烏が雪連れて 伊藤伊那男
障子戸のその日その日の機嫌かな 清水佳壽美
蔵王一山ほどの雪掻き老い給ふ 伊藤庄平
炉話に巴のその後義仲忌 坂下昭
ぼろ市や昔の時を古時計 小山蓮子
初席の紙より兎切り出さる 谷岡健彦
末社はも縄一本の注連飾 山元正規
「雲の峰」(主宰=朝妻力)【1989年創刊・2001年結社化・大阪府茨木市】
<2023年3月号(通巻381号)>
季の神は皆をみな神笹子鳴く 西田洋
源流は神の山なり初手水 中谷恵美子
声を張る鎮守の杜の初鴉 播广義春
八度目の卯年の母の雑煮かな 河原まき
老来も老馬の智とや福寿草 柏原康夫
丸餅を入れて今年は関西風 金子良子
ちやんちやんこの紫を着て傘寿の賀 結城澄子
「櫟」(主宰=江崎紀和子)【1993年創刊・愛媛県東温市】
<2023年3月号(通巻354号)>
漱石を語り漱石忌を知らず 櫛部天思
薬より癒しの言葉小六月 中川令
仏壇に青きアボカド開戦日 藤田美和子
ハロウィンの路地に死神立つてゐた 種谷良二
箱舟のかたちにマスクみづの上 杉野祐子
天上に知り人増えし日向ぼこ 矢野道子
つはの花相槌打ちに母訪ね 岡野晃子
「澤」(主宰=小澤實)【2000年創刊・東京都杉並区】
<2023年3月号(通巻276号)>
レバカツのレバーうすしよ秋の暮 小澤實
鳥雲に人は地に詩は胸奥に 高橋睦郎
籠おけば即精算やレジ台冷ゆ 高橋球子
冬灯点す己れのためにのみ 及川澄
ゴム手袋脱ぎて半分裏返る 山口土器
月夜茸発光獣(しし)は夢みたる 椎野順子
袋よりざざとチップス冬籠 佐藤昭子
「磁石」(主宰=依田善朗)【2021年1月創刊・埼玉県蓮田市】
<2023年3・4月号(通巻14号)>
生え変る鮫の歯寒波来りけり 依田善朗
吉良公の首が渡りし橋寒暮 篠崎央子
ふるさとの湯船は深し雪催 吉田祥子
駄菓子買ふ子らの暗算冬ぬくし 永田てる子
寒灯に息を殺して金箔師 清水明雄
身一つを輪切りに撮られすさまじき 河野絢子
本くるむほどよき硬さ古暦 飯田冬眞
「秋麗」(主宰=藤田直子)【2009年創刊・神奈川県川崎市】
<2023年3月号(通巻150号)>
楼蘭てふ絹のうすさの椿かな 藤田直子
ナポレオンの馬の仰けぞり寒波くる 永田満徳
薔薇色の空に富士置く冬椿 河合都志子
毛糸編む母は下の句つぶやけり 原真砂子
鶴帰る日の近づきて舞激し 大脇久子
嚔してオランウータン驚かす 小林恵子
変はらずに変はるものあり初景色 安齋行夫
「青山」(主宰=しなだしん)【1982年創刊・神奈川県横浜市】
<2023年3月号(通巻484号)>
ふるさとの雪の便りを読み返す 山崎ひさを
耳に音楽帽子には春の雪 しなだしん
歩いてゆけば一月の海の音 井越芳子
もてなしの柿の甘さや柿の村 合田睦子
朝起きていきなり師走来てをりぬ 細野和子
遠富士を引き寄せてゐる野水仙 南井俊輔
木の実降るばかり一族滅亡碑 谷川理美子
「蒼海」(主宰=堀本裕樹)【2018年創刊・東京都新宿区】
<通巻19号>
揺れて呑み呑みて揺れたる生身魂 牛尾冬吾
暗闇で触るる子の顔きりぎりす つしまいくこ
聖書閉ぢ小さき秋灯のみ点す 平林檸檬
退職者の白衣XLや冷ゆ 千野千佳
甘ゆるといふ恩返し草の花 加藤ナオミ
フリースローゆつくりそれて秋夕焼 浜堀晴子
退がるとき闇を見てゐる踊りかな 土屋幸代
「鷹俳句会」(主宰=小川軽舟)【1961年創刊・東京都千代田区】
<2023年4月号>
萌え絵もて窓目潰しの街寒し 小川軽舟
国引きの浜の穂俵飾りけり 沖あき
数へ日の空家壊せる砂塵かな 山中望
ストーブを囲む長靴するめ焼く 堤幸彦
大年や妻の実家の熱き風呂 鈴木之之
寒垢離に切れて飛び散る念珠かな 庄司下載
どんどの火目玉熱しと後ろ向く 新原藍
「たかんな」(主宰=吉田千嘉子)【1993年創刊・青森県八戸市】
<2023年3月号(通巻363号)>
柚子風呂に沈みてよりの波の音 難波政子
年寄の口は達者ぞ根深汁 岩津必枝
古漬の塩抜くことも年用意 松橋幸子
スルメ焼くストーブ列車の軋みかな 鎌田義正
餌やりて鴨の品性乱しけり 小笠龍雄
語り部の魂となりゆく炉端かな 池上美海
戸袋に昭和の日々や隙間風 川村久代
「橘」(主宰=佐怒賀直美)【1978年創刊・埼玉県久喜市】
<2023年4月号(通巻544号)>
初鼓月宮殿の白衣かな 石田京
晩白柚東男に進呈す 髙良満智子
合同句集の和綴ぢを飾る初座敷 中山明代
珈琲は濃い目霜夜に聴くバッハ 渡辺浩子
父母に見られて独楽のよく回る 枝松久子
流人塚辿る山路や寒椿 髙嶋静
母となる膝に真白き毛糸編む 小山八寿子
「田」(主宰=水田光雄)【2003年創刊・千葉県市川市】
<2023年4月号(通巻241号)>
団栗をころころ踏みて子に還る 井上圭子
女三人銀杏落葉を敷物に 真田えい子
霜柱立つのぼさんのグラウンド 清水余人
女学生の拍手に応へ雪吊師 細川朱雀
皓皓と星座おりくる結氷期 佐藤千恵子
逆光の中に青年三島の忌 伊東慶子
漱石忌頬杖ついて暮れにけり 兼行美栄
「天穹」(主宰=屋内修一)【1998年創刊・東京都渋谷区】
<2023年4月号(通巻302号)>
フリーズドライの七草もあり粥を吹く 佐々木建成
猪除けの囲ひの中に帰宅かな 山口美智
重ね着の父よユニクロ送ります 藤原基子
千両の二両がこぼる飾り床 安達幸代
啖呵切る寒紅著き講談師 塚本一夫
宅配のパエリア囲む女正月 島田道世
セビリアの聖堂金の初明かり 岩倉未央
「南風」(主宰=村上鞆彦)【1933年創刊・東京都葛飾区】
<2023年4月号(通巻953号)>
猫寺へ御礼参りに冬たんぽぽ 新治 功
手の甲に試す紅色雪催 館ゑみ子
春着の子の抱く春着のぬひぐるみ 深水香津子
亡き父や近くの雪がはやく降る 土井常寛
たてがみに雪ふところに仔ライオン 陰山 恵
探鳥の一行を抜き探梅行 湯浅松子
きらきらとぎらぎらのゐる成人式 水野大雅
「濃美」(主宰=渡辺純枝)【2009年創刊・岐阜県岐阜市】
<2023年4月号(通巻169号)>
灯を消して雛のかんばせ蒼かりき 渡辺純枝
除雪車の響きゐてまだ見えて来ず 関谷恭子
初御籤ふくみ笑ひの巫女の紅 服部呻矢
鐘の音のくらき日の寒椿かな 谷川みどり
残り香も亀屋左京の冬至ふろ 纐纈かよ
長生きと言ふお年玉賜りぬ 石﨑みや子
針山に針ひかりをり白椿 足立あい
「ひろそ火」(主宰=木暮陶句郎)【2011年創刊・群馬県渋川市】
<2023年3月号(通巻146号)>
肘張つて見る待春の腕時計 木暮陶句郎
あの頃のままのDJ聖夜くる 鈴木由里子
朝凪に金の航跡初荷船 猿橋嘉鶴
冬帽子詩人は蒼き頰持てり 小暮樟
若かりし妻の手編みの冬帽子 花井ひろかつ
底冷の護摩堂の火の高ぶりぬ 杉山加織
アイゼンの音重なりて空青し 下境洋子
「ふよう」(主宰=千々和恵美子)【2005年創刊・福岡県遠賀郡】
<2023年3月号(通巻97号)>
窯出しの尺の大皿囀れり 千々和恵美子
立春大吉螺鈿かがよふ床框 前原泰子
一山の読経しづもる春の雪 池内祥晴
ペン先のいぢけておりぬ寒戻り 藤井さわこ
寄せてくる波の薄さや春兆す 野村さち
風光る手押しポンプに誘ひ水 中坪光江
欠航にもらすため息春一番 益滿行俊
「ホトトギス」(主宰=稲畑廣太郎)【1897年創刊・東京都千代田区】
<2023年4月号(通巻1516号)>
その中に汀子加へて神の旅 稲畑廣太郎
へそくりをそつと剥がして古暦 酒井湧水
母の袖引いて姉妹や餅配 阪西敦子
冬ぬくし師を支へゆく人あまた 進藤剛至
踏まれても銀杏落葉の持つ浮力 塚本武州
園児らの柔らかな手や餅配 松藤素子
洋館にハーブ響きて冬日和 田中利絵
「街」(主宰=今井聖)【1996年創刊・神奈川県横浜市】
<NO.160>
間奏の三十秒に炭をつぐ 今井 聖
骨の罅までは映さず初鏡 池本光子
のりしろのやうに師走の街にゐる 太田うさぎ
五人目の足が炬燵の斜めから 北大路翼
膝立ちに双六の世を覗き込む 西生ゆかり
マフラーを編みかけのまま二十年 笹沼千景
初湯して草書のごとき髪と足 西澤みず季
「松の花」(主宰=松尾隆信)【1998年創刊・神奈川県平塚市】
<2023年3月号(通巻303号)>
自分にはわからぬ自分漱石忌 松尾隆信
古布団ほほほほ乾く一葉忌 あべみゑこ
凍道をきらきら星のきらきらと 木原邦彦
吾子の襟直し荒星見にゆかむ 鈴木大輔
青空へ落葉の階を登り切る 佐藤公子
持ち時間少なくなりぬ寒昴 中川寛子
鍋焼やゆるりと黄身のながれ出す 瀧谷弥可
「森の座」(代表=横澤放川)【2017年創刊・東京都文京区】
<2023年3月号>
風紋も春愁もそれ繰り返し 横澤放川
紅葉駅人すぐ散つて道残る 和田西方
天に富士虚無僧茸の汁熱し 北島大果
枯れ切つてより晴れ晴れと蓮の骨 石橋みちこ
蓮の実の飛んで漆黒なる花托 光井加代子
出稼ぎの父巨いなる朝日背に 大川恵子
マフラーはきつと少女の落し物 栗原実季
「雪華」(主宰=橋本喜夫)【1978年創刊・北海道旭川市】
<2023年3月号>
人日や休戦一日さへならず 長谷川忠臣
海市まで手持ちの時間つかひきる 大河原倫子
白鳥は眠る水面を窪ませて 星出航太郎
護送車の屋根も雪積む松の内 三国眞澄
魚焼きグリルに横たわる人参 福井たんぽぽ
世がすべて異端審問めく凍夜 藤原ハルミ
福引のティッシュもそもそ泣く映画 三谷なな子
「楽園」(主宰=堀田季何)【2021年創刊】
<第2巻第6号(通巻12号)>
瞼閉じそのまま春になれば開く 赤野四羽
煮凝のやうな人居るメタバース 小田狂声
ダイヤルなき後半生や冬座敷 山崎垂
Night on my bed / The smell of your body / Never falls asleep Amir Or
vis în zori – / un fulg / topește un glonte Marius Chelaru
本棚の絡繰うごく大掃除 玉木たまね
寿司といふものあるらし蟹せつせつと思いつめて イグノラムス・イグノラビムス
【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2023年4月30日
*対象は原則として2023年4月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2023年5月5日
◆投稿先
以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/
【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】