コンゲツノハイク【各誌の推薦句】

【結社推薦句】コンゲツノハイク【2023年10月分】


毎月が俳句年鑑! 前月に刊行された俳句結社誌・同人誌の最新号から「(最大)7句」を推薦いただき、掲出するコーナーです。このページの句のなかから、推しの一句を選んでご鑑賞いただく読者参加型コーナー「コンゲツノハイクを読む」、10月20日締切です。どなたでもご参加いただけますので、詳しくはリンク先をどうぞ。来月分のコンゲツノハイクについては、こちらのフォームからご投稿ください


コンゲツノハイク 2023年10月
(2023年9月刊行分)

今月の参加結社☞「秋草」「いには」「伊吹嶺」「円虹」「海原」「火神」「火星」「河」「銀化」「銀漢」「櫟」「澤」「磁石」「秋麗」「蒼海」「鷹」「橘」「南風」「濃美」「ふよう」「ホトトギス」「街」「松の花」「三日月」「森の座」


「秋草」(主宰=山口昭男)【2010年創刊・兵庫県神戸市】
<2023年10月号(通巻166号)>
釘抜の支点力点赤のまま 山口昭男
南天の咲きこぼれたるほどのこゑ 渡辺一二三 
白線に少しく嵩や日の盛 高橋真美
噴水や武神のごとく愛を聞く 竹中佑斗
仇とる顔して干せる氷水 栗原和子
健康な人のくれたるトマトかな 舘野まひろ
明らかに汗の人より来る電話 小鳥遊五月


「いには」(主宰=村上喜代子)【2005年創刊・千葉県八千代市】
<2023年10月号(通巻181号)>
鬼の面後ろ頭に金魚売 村上喜代子
汗ぬぐひお国訛りを通訳す 伊東泰子
たのしげに家壊しをり竹煮草 鈴木靖彦
返事してくるる人ゐて夜の秋 ひめみや多美
訃報聞くことに慣らされ稲の花 森竹さち子


「伊吹嶺」(主宰=河原地英武)【1998年1月創刊・愛知県名古屋市】
<2023年9月号(通巻303号)>
夏負けや水よく吸へる三時草 河原地英武
蛸絵馬に恋の願ひや花蘇鉄 栗田やすし
愚痴こぼすメロンソーダの小さき泡 太田滋子
あぢさゐや嫁して馴染みし浜言葉 市川あづき
枇杷剥けばいつしか小指立ちにけり 加藤剛司
玉葱の断面に見る銀河系 朝倉淳一
二日目のカレーにトマト足しにけり 小川ミヅホ


「円虹」(主宰=山田佳乃)【1995年創刊・兵庫県神戸市】
<令和5年9月号 第345号>
孑孑の剽軽に気を許すまじ  椋誠一郎
フィボナッチ数列背負ふ蝸牛  辻桂湖
一物も持たぬ気軽さ昼寝覚  島田章平
抱きとめる汗だくの子の芳しき  おおいかづえ
蛍籠編む手さばきの見事なる  石川昌子
ヨット過ぐ岬の端のティーショット  山添ひびき
少年の青年になりサングラス  富川浩子


「海原」(代表=安西篤)【2018年創刊・千葉県市川市】
<2023年9月号(第51号)>
ともだちは五月の風でまるい石 たけなか華那
あやとりの人差し指にある徂春 ナカムラ薫
さえずりや回想という乗り物ゆれ 芹沢愛子
ひばり灯って天地の回路つながったね 中村晋
薔薇愛でるために使わぬ指のあり 福岡日向子
蔓草の赤黒き實淀に浮き 吉田貢(吉は土に口)
ずぶ濡れの森ずぶぬれの足桜桃忌 渡辺のり子


「火神」(主宰=今村潤子)【1990年創刊・熊本県熊本市】
<2023年夏号(通巻78号)>
豚のしつぽのの字のの字に桜東風 今村潤子
鯉の目の閉づることなき寒さかな 永田満徳
落葉踏む縄文人も聞きし音  後藤信雄
日焼の子薄目してまた黙祷す  川本美佐子
貝寄風の創る砂紋の入日かな  坂本真二
大海鼠吐き出す海のいのちかな  菅野隆明
しんがりも役目あるらん鳥帰る  大海八緒


「火星」(主宰=山尾玉藻)【1936年創刊・大阪府大阪市】
<2023年9月号(通巻1004号)>
炎帝の胸もとへ槍投げんとす 山尾玉藻
名を呼ばれ昼寝の底につまづけり 坂口夫佐子
手間ひまに蝿しきり追ふ朝市女 湯谷良
渓音に積まれてありし藺座布団 蘭定かず子
大釜にたかんな鎮む高嶺星 山田美恵子
かはほりの風に晒せり耳のつぼ 五島節子
日盛や地を這ひゆける湯気の影 上原悦子


「河」(主宰=角川春樹)【1958年創刊・東京都新宿区】
<2023年9月号>
妻は子に「裸足になつて踊らうよ」 角川春樹
青栗の棘やはらかき娶りかな 淵脇護
この星の蚯蚓の糞と呼ばれたし 宮京子
水打つてより喧噪の匂ひけり 滝口美智子
東京を巣食ふメトロや熱帯夜 田中まぎぬ
人の世の花栗にほふ夜の坂 西野津奈子
縞馬の縞鮮やかに七月来 前田礼子



銀漢(ぎんかん)」(主宰=伊藤伊那男(いなお)【2011年創刊・東京都千代田区】
<2023年10月号(通巻152号)>
入りたる虚子門といふ片かげり 伊藤伊那男
吾が影も休ませてをり片かげり  武井まゆみ
一山を大きく祓ふ御戸開    山﨑ちづ子
またひとつ消えて風呼ぶ夜店の灯  竹内洋平
更衣斯くて古りゆく月日かな   福原紅
照らさるる血糊の艶や立版古  宮本起代子
蜘蛛の囲に捕まつてゐるかくれんぼ  山田茜


「銀化」(主宰=中原道夫)【1998年創刊・東京都港区】
<2023年10月号(通巻301号)>
夏帽の彼をトムヤムクンと呼ぶ 彌榮浩樹
梅雨の月ひらひら母の家出せり 水口佳子
歩かせてまた少し抱く祭りの子 松居舞
岩牡蠣ともてくる岩の裏おもて 越野蒼穹
案の定毛虫は毛から焼けてゆく 川村胡桃
外灯に高野聖を誘き出す 新井竜才
戦争を知らぬ子も喜寿終戦日 中山幸子


「雲の峰」(主宰=朝妻力)【1989年創刊・2001年結社化・大阪府茨木市】
<2023年9月号(通算387号)>
王陵の谷に寝ころぶ星月夜  朝妻  力
夏至の夜の妻盛装で帰りくる  伊津野 均
ゆめはしを渡り夢淵風涼し  上西美枝子
風の香や銀の馬車道まつすぐに  角野 京子
私にも耐用年数三尺寝      糟谷 倫子
神剣に続き潜れる茅の輪かな  五味 和代
おばしまに昼のぬくみや祭舟  小林伊久子


「櫟」(主宰=江崎紀和子)【1993年創刊・愛媛県東温市】
<2023年9月号(通巻360号)>
人間の出口をさがす梅雨夕焼 江崎紀和子
高層のマンション登る蝸牛 中川令
青大将するりと縺れほどきたる 渡辺美紀子
有給休暇新緑が取れと言ふ 種谷良二
ほうたるの交信ヒトの無言劇 末次朗
冷酒や一重瞼の若女将 岡野晃子
短夜や賞味期限のある言葉 杉野祐子


「澤」(主宰=小澤實)【2000年創刊・東京都杉並区】
<2023年9月号(通巻282号)>
八十八夜ふみきりわたり銭湯へ 小澤實
山や野や紅葉の色は肉の色 高橋睦郎
鉄漿つけて義元の首さみだるる 山岸樵鹿
ビールの泡風にとばして運びくる 布田恭子
革命もはや世に育ち得ず扇風機 柳元佑太
搾乳器外せば円き跡と汗 平嶋さやか
蟻地獄吸ひし蟻の身ひしやげたる 榮猿丸


「磁石」(主宰=依田善朗よだぜんろう【2021年1月創刊・埼玉県蓮田市】
<2023年9・10月号(通巻17号)>
ドアノブのひんやり湿る桜桃忌 依田善朗
ケチャップをギュッと絞つて子どもの日 近藤陽子
秞子忌の竹落葉なほ湿りたる 飯田冬眞
雨しとど紫陽花あはく色を呼ぶ 柿沼あい子
若葉風身すぎ世すぎの背広干す 細井寿子
泥鰌鍋人にそれぞれ昭和の世 長澤寛一
反論はせず紫のキャベツ切る 篠崎央子


「秋麗」(主宰=藤田直子)【2009年創刊・神奈川県川崎市】
<2023年9月号(通巻156号)>
岩に模し眠れる魚も終戦日 藤田直子
転生のごとき海月や隠岐の朝 川俣このみ
かはほりの水飲みに来る備前堀 塚原涼一
流し目の越路吹雪や夏帽子 京極佳雪
サーファーの北斎の浪捉へけり 市川和雄
新緑に透けて輝く金色堂 浅野雄一
かはほりや巫女は市井へ帰りゆく 平野暢行


蒼海そうかい」(主宰=堀本裕樹)【2018年創刊・東京都新宿区】
<21号>
熱き湯に浸るや山を一つ焼き 杉本四十九士
猫の子のパン生地のごと伸び縮み 松本武千代
花時や片手に運ぶトイピアノ 犬星星人
黒南風や給水塔に魔力満つ 白山土鳩
投擲の形に受験子寝てゐたる 西木理永
蕗味噌を背の鞄に入れくれし 平林檸檬
春の土へにはとりを置く美大生 種田果歩


「鷹俳句会」(主宰=小川軽舟)【1961年創刊・東京都千代田区】
<2023年10月号>
図鑑絵の虫のかがやき秋灯  小川軽舟
水無月や靴屋にゴムの匂ひ満ち 椎名果歩 
ご飯粒残さぬ如し五月晴  坂本空
短夜やめらめら喋るユーチューバー  加藤又三郎  
風死すや部室にビラの重ね貼り  たなか礼
葭切の癇声散らす朝湿り  山下雄二
ピラニアの真つ赤な眼熱帯夜   重田春子



たちばな」(主宰=佐怒賀直美)【1978年創刊・埼玉県久喜市】
<2023年10月号(通巻550号)🎉>
再起期す青水無月のシャワー浴ぶ 中山明代
目高の子小さきや甕の陰から湧く 簑口民子
賽の目にマンゴー反らし大暑なる 斯波広海
うなぎ屋の大きな猪口や夏祭 持田義男
木洩日に影の紛るる揚羽蝶 南杏子
夏野原脱線続く縄電車 栗原美代子
囲みたる葭簀を巻きて花屋開く 猪瀬幸江


南風(なんぷう)」(主宰=村上鞆彦(ともひこ)【1933年創刊・東京都葛飾区】
<2023年10月号(通巻959号)>
あとかたもなく消えてゐる夜店かな 鳥山有里子
巣立ちたる燕ちよこんと巣にをりぬ 新治功
名月や明かりを消せば椅子の影 杉本康子
蛇の髭の一縷が枯れて大西日 大熊光汰
太陽の光プールに置いて行く 太田利明
鉛筆の薄きを好み夜の秋 市原みお
雨踏んで雨のたばしる祭足袋 佐々木千賀子



「濃美」(主宰=渡辺純枝)【2009年創刊・岐阜県岐阜市】
<2023年10月号(通巻175号)>
天高し我に海人の血樵の血 渡辺純枝
どこからも入れるかたち蟻地獄 石井雅之
蒔絵師のほそく息つぐ梅雨最中 前川けい子
次の皿しづかに待ちぬ夏料理 関谷恭子
我が声の年々低く牛蛙 日向頼子
父の日や生日足日と酌みかはし 大沼明子
前ばかり見てゐた昭和夏の空 猪俣保子


「ふよう」(主宰=千々和恵美子)【2005年創刊・福岡県遠賀郡】
<2023年9月号(通巻103号)>
花野抜け氷河特急走る走る  千々和恵美子
地球儀を廻す八月十五日  藤井さわこ
灯涼し蕎麦が自慢の山ん茶屋  諌山恵子
月光やどちらともなく歩き出し  嶋田春海
かなかなや無用となりし鍵の数  鍜治惠津子
束の間の雨盆僧を引き留むる  垣内かをる
秋めきて指輪の跡の白くあり  小森圭以子


「ホトトギス」(主宰=稲畑廣太郎)【1897年創刊・東京都千代田区】
<2023年10月号(通巻1522号)>
水の綺羅纏ひて目高透き通る 稲畑廣太郎
桜蘂一気に降らせ今朝の風 池末朱実
杜の雨濡らす鹿の子の産毛かな 葛原由起
生ひ茂る木々の遮る余花の雨 松藤素子
池の黙破ることなくあめんぼう 木村直子
気高さや背筋をぴんと花菖蒲 井上大輔
風薫る祈ればそこにわが師をり 進藤剛至


「街」(主宰=今井聖)【1996年創刊・神奈川県横浜市】
<NO.163>
縁側に青梅四五個ありて留守     今井聖
かう打てるビーチボールやさう返す  太田うさぎ
「アッ」とのみ入りし留守電夏の雨  金丸和代
戦争も花火もテレビの向かう側    北大路翼
水泳帽つけてから服脱ぎ始む     竹内宗一郎
ビール飲むスカイツリーを傾けて   畠山尚哉
光撒くやうに酢豚へパイナップル   藤尾ゆげ


「松の花」(主宰=松尾隆信たかのぶ【1998年創刊・神奈川県平塚市】
<2023年9月号(通巻309号)>
ひしひしと水ひしひしと早苗かな 松尾隆信
夏至の日を走るゆつくりとほくまで 鈴木大輔
俎板の包丁までも大夕焼 永島紀子
書く前の半紙ひと撫でして涼し 矢野玲奈
蟻乗せてレジャーシートの飛びたがる 興梠隆
あをあをと岬の先端大南風 佐藤公子
土鳩鳴くたんすの奥に子の浴衣 櫻井波穂


「三日月」(代表=川越歌澄)【2020年創刊・東京都墨田区】
<2023年9月号>
光るのはシーラカンスか夜半の秋 川越歌澄
海神と海を引き合ふ昆布漁 伊藤黎
大花野ただいま臨死体験中 大澤十八番
文楽人形くくと横向く律の風 佐藤かほり
百合開く何の力も使はずに 丸山晶子
秋暑しフタコブラクダ睫毛濃し 蒲谷きよみ


「森の座」(代表=横澤放川)【2017年創刊・東京都文京区】
<2023年9月号>
月代や今朝の箒目そのままに 横澤放川
水に音風に色あり夕河鹿 河野靖
丸描いてちよん丸描いてあめんぼう 石田経治
ヤッホーに応へるカッコー誕生日 竹内伸子
矢車の音して夜風あるらしく 曽我欣行
青葉風母は旅立つ孵化のごと 伊藤亜紀
サイダーの囁きは消え恋心 増田尚子



【次回の投稿のご案内】

◆応募締切=2023年10月31日
*対象は原則として2023年10月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください

◆配信予定=2023年11月5日

◆投稿先
以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/



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