
【秋の季語=仲秋〜晩秋(9月〜10月)】紫式部の実/式部の実 実紫 子式部
こちらがムラサキシキブの実。秋に色づく。

源氏物語の作者である「紫式部」の名をもっているところに、俳句としては、ちょっと文学的想像力をくすぐられる野草のひとつ。紫といっても、ちょっと薄めの色をしています。かたちはベリー系ですが、食べることはできない。なかには白いものもあって、「白式部」として俳句で詠まれることがある。
【紫式部の実(中七)】
いややさしむらさきしきぶをりもてば 山口青邨
渡されし紫式部淋しき実 星野立子
落葉中紫式部実をこぼす 高濱年尾
【紫式部の実(下五)】
紫の許りて紫式部の実 後藤夜半
うしろ手に一寸紫式部の実 川崎展宏
顔すゑてをらばや紫式部の実 飯島晴子
眼よりこぼれて紫式部の実 鈴木鷹夫
火の中に見えて紫式部の実 岸本尚毅
【実紫(上五)】
実むらさき女流は育ち易きかな 後藤比奈夫
実むらさき輪ゴムはつきり飛びにけり 波多野爽波
【実紫(下五)】
をみならの山旅の荷に実むらさき 有働 亨
雨後いまだ雲のたゆたふ実むらさき 能村登四郎
河原までつゝぬけに見ゆ実むらさき 飴山實
祗園恋しや一力の実むらさき 辻田克巳
道元の忌の雨粗し実むらさき 吉田鴻司
どの実にも色ゆきみちて実むらさき 村上鞆彦