冬の季語

【冬の季語】日記買う

【冬の季語=仲冬(12月)】日記買う

【ミニ解説】

来年の日記を買うこと。

まだ予定の書き込まれていない、まっしろな日記は、うきうきするもの。

歴史的仮名遣いだと「日記買ふ」となる。

1900年ごろ、日記ブームのきっかけをつくった博文館の日記には、各頁に和歌や俳句が刷り込まれています。

実朝の歌ちらと見ゆ日記買ふ 山口青邨

「実朝の歌」に惹かれて買った日記を、年が明けて使い始めるという具体性が目を引く句。それを「初日記」といって、新年の季語としています。

一方で、

かたくなに日記を買はぬ女なり 竹下しづの女

こういう人もきっといる。というか、日記買わない俳句は、けっこうある。

なお、年明けて最初に日記を書くことには「初日記」という新年の季語がある。


【日記買う(上五)】
日記買ふ耳美しき老婦人 飯田龍太
日記買ひ車内明るき側に立つ 岡本眸
日記買ひその後赤き花を買ふ 山田弘子
日記買ふ運河に海の星うまれ 鷹羽狩行
日記買ふ星の貧しき街なれば 櫂未知子
日記買い自由の女神ぽく抱く 神野紗希
日記買ふよく働いて肥満して 西川火尖

【日記買う(中七)】
かたくなに日記を買はぬ女なり 竹下しづの女
ふと羨し日記買ひ去る少年よ 松本たかし
買はずとも日記贈られ励まさる 阿波野青畝
父として日記は買はず絵本買ふ 森田峠
鍵のある日記長女に買ふべきか 上野泰
立読みの女が日記買ひにけり 長谷川和子

【日記買う(下五)】
実朝の歌ちらと見ゆ日記買ふ 山口青邨
百歳の月日記さん日記買ふ 山口青邨
先生の獄の句を見し日記買ふ 上田五千石
書けばきつと遺書めく日記買はずをり 能村登四郎
母にのこる月日とならむ日記買ふ 古賀まり子
すでにして己れあざむく日記買ふ 岡本眸
口紅の赤と十年日記買う 森田智子
オムライス的な義妹が日記買ふ 土井探花


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