【秋の季語】温め酒

【秋の季語=晩秋(10月)】温め酒

秋も深まり、寒さもつのってくる時分は、たしかに燗をつけたくなる(あるいはレンジで温めたくなる)ことがある。「ぬくめざけ」と読む。

何か特別な行事と関わっているわけではなく、冷たい酒で体を冷やすなという養生訓のごときようなものでもあるのだろう。

謡曲「紅葉狩」のなかに、「林間に酒を温めて紅葉を焼くとかや」という一節があるが、これは白居易の詩『王十八の山に帰るを送り、仙遊寺に寄題す』の中の一句に由来する。林の中で紅葉を集めてたき火をし、程よく燗をして酒を飲むということ。「とびきり燗」のように熱々ではなく、「日向燗」「人肌燗」「ぬる燗」あたりのイメージであろうか。

〈うらぶれの酒温めの図なるかな〉(京極杞陽)のように、かつては「酒温める」のように動詞として用いられることも多かった。

ちなみに、「冷酒」は夏の季語、「熱燗」は冬の季語とされる。


【温め酒(上五)】
温め酒雨なら雨を褒めてをり 能村研三
温め酒弔辞褒められゐたりけり 小笠原和男
温め酒女友達なる我に 阪西敦子

【温め酒(中七)】

【温め酒(下五)】
悦びにをののく老の温め酒 高浜虚子
うつむきしまま了りけり温め酒 草間時彦
ぬくもりのあるかなきかに温め酒 長谷川櫂

【その他の季語と】


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