【秋の季語】台風(颱風)

【秋の季語=仲秋(9月)】台風(颱風)

秋口になると、列島の西側の海に発生する熱帯低気圧が原因となって、時折雷雨を伴う、とてつもなく強い風が吹く。気象学的には、最大風速が約毎秒十七メートル以上のものを「台風」と呼ぶ。

このような現象は「野分」と呼ばれており、源氏物語や枕草子にも登場する。源氏において「野分」は五十四帖の巻名のひとつ。光源氏36歳の秋のころのエピソード。〈けざやかにめでたき人ぞ在いましたる野分が開あくる絵巻のおくに〉は、源氏の現代語訳を行った与謝野晶子による一首。

明治期になって英語のtyphoonは、片仮名でタイフーンと書かれることもあれば、「大風」と書かれることもあったが、岡田武松が1907年に台風を学術的に定義したことを受け、大正期からは「颱風」が一般化した。

漢字の話をすると、「颱風」を簡略的な字で置き換えたものが「台風」であるが、「颱」という漢字じたいが、 typhoonの頭文字 ty を音訳したものであり、一文字ですでに「台風」をあらわす形声文字である。


【台風(上五)】
颱風の去つて玄界灘の月 中村吉右衛門
台風や四肢いきいきと雨合羽 草間時彦
颱風が逸れてなんだか蒸し御飯 池田澄子
台風圏四角くたたむ明日の服 柏柳明子
台風の目の只中で愛しあふ 堀切克洋

【台風(中七)】
梯子あり颱風の目の青空へ 西東三鬼
包丁を研ぎ台風を待ちゐたり 座間游
放課後の暗さ台風来つつあり 森田峠
酒さかな揃へ台風待つとせる 川名将義

【台風(下五)】
めちやくちやなどぜうの浮沈台風くる 秋元不死男


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