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降る雪や玉のごとくにランプ拭く 飯田蛇笏【季語=雪降る(冬)】


降る雪や玉のごとくにランプ拭く

飯田蛇笏

本日と明日は、共通テスト。共通テスト(少し前までは、センター試験)の日にはよく雪が降り、影響を受けた受験生がニュースになったりしている。時期的な問題をどうにかならないのかとは思うのだがその後の日程を逆算するとこの日になってしまうのだろう。

最近は推薦入試で早々に進路が決まる生徒が増えてきたようだが、推薦合格組の生徒たちも中だるみ防止のためにセンター試験を受けるよう言われると聞く。

ともあれ受験生の皆さん、まず無事に会場に着くことを願っております。そして実力を発揮されますように。

私が最後に入試に臨んだ時、先生からは湯島天神の鉛筆を、友人からはチベット密教のお守りをもらった。とりあえず両方持参して入試を受け、最終的には希望の大学に入れた。稀有なプレゼントである。

入試の時によく思ったのは、当日風邪をひいたとか電車が遅れたとか言い訳をしたところで点数が上がって合格できるわけではない、結果がすべてなのだということだった。全力で体調を整え、集中して問題に取り組む経験はその後の自分を支える柱のひとつとなった。

ということで今週は試験の句にしようかとも考えたが、それはもうお腹いっぱいかもしれないので雪の句を。

降る雪や玉のごとくにランプ拭く

ランプというと現代ではレトロ感を楽しむアイテムと化しているが、この句が作られた当時は今よりずっと生活に密着していたはずである。光源となるエネルギーも電気やガスよりは油脂であったと考えるべきであろう。山蘆という場所柄やランプそのものの供給事情など掘り下げたい箇所はいくつもある。

降り続く雪はどこか焦燥感を呼び起こす。一片ずつでは軽いのに、降るさまを見るとその速さに驚く。積もってしまえばまた別の感情を覚えるのは明るさゆえか。

この句の眼目は中七。「玉のごとくに」なのでランプが球形とは言っていない。玉を拭くようにランプを拭くのだ。「玉」は宝石のほか美しいもの、貴重なものを指す。瑕のない、大切なもの。「玉のごとくに」というのは大切に、ということなのだ。そこにはただランプを拭いているだけではなく、ランプに重ねる思いがあることを感じさせる。

「玉」は「魂」とも重なる。失った命を慈しむかのようにランプを拭くのである。

降る雪への焦燥感とそれに触発されたかのように大切に何かを拭くという行為は密接で、季語が動かない。

焦った時にどんな行動をとるか。まずは深呼吸をお勧めしたい。

『雪峡』(1951年)所収。

吉田林檎


【執筆者プロフィール】
吉田林檎(よしだ・りんご)
昭和46年(1971)東京生まれ。平成20年(2008)に西村和子指導の「パラソル句会」に参加して俳句をはじめる。平成22年(2010)「知音」入会。平成25年(2013)「知音」同人、平成27年(2015)第3回星野立子賞新人賞受賞、平成28年(2016)第5回青炎賞(「知音」新人賞)を受賞。俳人協会会員。句集に『スカラ座』(ふらんす堂、2019年)


【吉田林檎さんの句集『スカラ座』(ふらんす堂、2019年)はこちら ↓】



【吉田林檎のバックナンバー】
>>〔83〕ラヂオさへ黙せり寒の曇り日を 日野草城
>>〔82〕数へ日の残り日二日のみとなる 右城暮石
>>〔81〕風邪を引くいのちありしと思ふかな 後藤夜半
>>〔80〕破門状書いて破れば時雨かな 詠み人知らず
>>〔79〕日記買ふよく働いて肥満して 西川火尖
>>〔78〕しかと押し朱肉あかあか冬日和 中村ひろ子(かりん)
>>〔77〕命より一日大事冬日和 正木ゆう子
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>>〔54〕水中に風を起せる泉かな    小林貴子
>>〔53〕雷をおそれぬ者はおろかなり    良寛
>>〔52〕子燕のこぼれむばかりこぼれざる 小澤實
>>〔51〕紫陽花剪るなほ美しきものあらば剪る 津田清子
>>〔50〕青葉冷え出土の壺が山雨呼ぶ   河野南畦
>>〔49〕しばらくは箒目に蟻したがへり  本宮哲郎
>>〔48〕逢はぬ間に逢へなくなりぬ桐の花 中西夕紀
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>>〔38〕薔薇の芽や温めておくティーカップ 大西朋
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>>〔35〕あまり寒く笑へば妻もわらふなり 石川桂郎
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>>〔7〕してみむとてするなり我も日傘さす 種谷良二
>>〔6〕香水の一滴づつにかくも減る  山口波津女
>>〔5〕もち古りし夫婦の箸や冷奴  久保田万太郎
>>〔4〕胎動に覚め金色の冬林檎     神野紗希
>>〔3〕呼吸するごとく雪降るヘルシンキ 細谷喨々
>>〔2〕嚔して酒のあらかたこぼれたる  岸本葉子
>>〔1〕水底に届かぬ雪の白さかな    蜂谷一人


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