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こまごまと大河のごとく蟻の列 深見けん二【季語=蟻(夏)】

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こまごまと大河のごとくの列

深見けん二

「こまごまと」と「大河」というふたつの言葉は、一見すると矛盾している。蟻の列は、大河のようであるが、やはり「こまごまと」している。つまり、この表現は、自分で書いたものを、みずからの手で二重線を引いて抹消するような、そんな手つきである。もしこれが単に「大河」に見立てただけならば、たんなる嘘になってしまうのだが、この抹消の身振りがあることによって、現実から5センチほど浮かび上がった世界の描写となっている。『深見けん二俳句集成』(2016)より。(堀切克洋)



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