ハイクノミカタ

生きものの影入るるたび泉哭く 飯島晴子【季語=泉(夏)】

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: eye-2horikiri--1024x538.png

生きものの影入るるたび泉哭く 

飯島晴子


晴子初期で最も有名な句として、〈泉の底に一本の匙夏了る〉がある。「匙」という日常性(食事)を、たゆたう水のイマージュのなかに閉じ込めているのに対し、掲句は「泉」そのものを、まるで生き物のようにして描いている。飯島晴子の句における神話的想像力は、この「哭く」という表現に見られるように、人間的なものを、すべて自然に明け渡してしまうようなところがある。〈さつきから夕立の端にゐるらしき〉のような淡白さとは、まるで対照的な感情の深さが、この「泉」のイマージュには、こめられている。『平日』(2001)所収。(堀切克洋)



【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 胎動に覚め金色の冬林檎 神野紗希【季語=冬林檎(冬)】
  2. 飛んでゐる蝶にいつより蜂の影 中西夕紀【季語=蝶・蜂(春)】
  3. 晴れ曇りおほよそ曇りつつじ燃ゆ 篠田悌二郎【季語=躑躅(春)】
  4. 初島へ大つごもりの水脈を引く 星野椿【季語=大つごもり(冬)】
  5. 缶ビールあけて東京ひびきけり 渡辺一二三【季語=缶ビール(夏)】…
  6. 雀来て紅梅はまだこどもの木 成田千空【季語=紅梅(春)】
  7. 空のいろ水のいろ蝦夷延胡索 斎藤信義【季語=蝦夷延胡索(夏)】
  8. 虹の空たちまち雪となりにけり 山本駄々子【季語=雪(冬)】

おすすめ記事

  1. 一瞬で耳かきを吸う掃除機を見てしまってからの長い夜 公木正
  2. 【連載】もしあの俳人が歌人だったら Session#15
  3. 【クラファン目標達成記念!】神保町に銀漢亭があったころリターンズ【12】/飛鳥蘭(「銀漢」同人)
  4. 泥に降る雪うつくしや泥になる 小川軽舟【季語=雪(冬)】
  5. 黒揚羽に当てられてゐる軀かな 飯島晴子【季語=黒揚羽(夏)】
  6. 啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々 水原秋櫻子【季語=啄木鳥(秋)】
  7. 後鳥羽院鳥羽院萩で擲りあふ 佐藤りえ【秋の季語=萩(冬)】
  8. 大阪の屋根に入る日や金魚玉   大橋櫻坡子【季語=金魚玉(夏)】
  9. 【秋の季語】露草/月草 ほたる草 ばうし花
  10. 【復活?】神保町に銀漢亭があったころ【目次】

Pickup記事

  1. 恋にしてわざと敗けたるかるた哉 羅蘇山人【季語=かるた(新年)】
  2. 【春の季語】石鹸玉
  3. 神保町に銀漢亭があったころ【第51回】大野田井蛙
  4. 【#43】愛媛県歴史文化博物館の歴史展示ゾーン
  5. 神保町に銀漢亭があったころ【第81回】髙栁俊男
  6. 【夏の季語】梅雨入
  7. 無方無時無距離砂漠の夜が明けて 津田清子(無季)
  8. 【読者参加型】コンゲツノハイクを読む【2022年6月分】
  9. 【#20】ミュンヘンの冬と初夏
  10. 【連載】新しい短歌をさがして【4】服部崇
PAGE TOP