【春の季語】巣箱

【春の季語=三春(2月〜4月)】巣箱

春になって気温が上昇してくると、鳥の繁殖期がはじまる。

主に野性の小鳥の繁殖を助けるために樹木に取りつけるのが「巣箱」である。

人とは一定以上の距離を保っている野鳥も、繁殖期にかけては人間の生活圏に近くなり、その賑やかさに春らしさを感じることもある。

自然にできる「鳥の巣」も、「鳥の恋」や「鳥交る」もまた春の季語。


【巣箱(上五)】
巣箱より家がどんどん高くなる 雪我狂流
巣箱掛け最初の雨が降つてをり 小池康生

【巣箱(中七)】
遠目にもしかと巣箱の新しく 大牧広
幹軽くたたきて巣箱掛けにけり 広渡敬雄
人の世に巣箱を架けて兜太逝く 津久井紀代
頰杖や巣箱に鳥の入るまで 上田りん
考へたすゑに巣箱へ入りけり 生駒大祐
やはらかく鳥は巣箱を出づるかな 中西亮太

【巣箱(下五)】
としよりのはるか高みに巣箱あり 大牧広
白毫は意を通す孔巣箱にも  中原道夫
未生なる一羽のための巣箱かな 櫂未知子
さむさうなあたたかさうな巣箱かな 対中いずみ
どこからも狙はれさうな巣箱かな 前山真理
人のかほ描かれてゐたる巣箱かな 藤原暢子
ワインの名刻まれてある巣箱かな 堀切克洋
卒塔婆の三本通る巣箱かな 小山玄紀

【ほかの季語と】
リラ冷えや巣箱に欲しき時計台  鷹羽狩行
巣箱から氷柱ひとすぢかがやけり 浅井敏子
巣箱みな古びて木々の芽吹きけり  長郷善隆


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】


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