【夏の季語=晩夏(7月)】夕焼
西に傾いた太陽、またはその日差しのこと。
一年を通してみられるが、日が長い夏の、とくに晩夏のころの夕焼けは「西日」も伴って印象的なものとなる。
その他の季節においては、それぞれ「春夕焼」「秋夕焼」「冬夕焼」「寒夕焼」と呼び分ける。
散文では「夕焼け」と「け」を送るが、季語としては送らず「夕焼」と詰めて書くことも多い。
歴史的仮名遣いは「ゆふやけ」。
一般には使われないが、俳句では時間的経過を示すために「夕焼く」と動詞として用いられることもある。
【夕焼(上五)】
夕焼や答へぬベルを押して立つ 久保ゐの吉
夕焼の中に危ふく人の立つ 波多野爽波
夕焼に遺書のつたなく死ににけり 佐藤鬼房
夕焼雀砂浴び砂に死の記憶 穴井太
夕焼けビルわれらの智恵のさみしさよ 阿部完市
夕焼は全裸となりし鉄路かな あざ蓉子
夕焼や新宿の街棒立ちに 奥坂まや
夕焼けに入っておいであたまから 妹尾凛
夕焼や千年後には鳥の国 青木柚紀(広島)
夕焼やいつか母校となる校舎 大池莉奈(吹田東)
【夕焼(中七)】
ジャムのごと背に夕焼けをなすらるる 石原吉郎
何もなく死は夕焼に諸手つく 河原枇杷男
ぐんぐんと夕焼の濃くなりきたり 清崎敏郎
巨きとおもふ夕焼に立ち上がる牛 鈴木牛後
一滴となり夕焼が口のなか 宮本佳世乃
【夕焼(下五)】
私忌いな世界忌の大夕焼 高橋睦郎
われの影われよりも美し土佐夕焼 柳元佑太
オール漕ぐ風の湿りや大夕焼 新谷里菜(金沢泉丘高校)
手を繋いだっていいくらい夕焼けだ 伊村史帆(厚木東高校)
【その他の季語と】
夕焼のうつりあまれる植田かな 木下夕爾