【連載】岸田祐子の「句集ホロスコープ」【#8】『水界園丁』生駒大祐(港の人、2019年)

<はじめに> → 「句集ホロスコープ」【#1】

【今月の1冊/今月の1句】


芍薬の夢をはなれて雲平ら
『水界園丁』生駒大祐
2019年6月28日 神奈川県・正午
太陽/蟹座、月/牡牛座、水星/獅子座、金星/双子座、火星/蟹座、木星/射手座、
土星/山羊座、天王星/牡牛座、海王星/魚座、冥王星/山羊座


 星占いでは360度の円を12の部屋に分け、その一つ一つに星座が割り当てられています。これがいわゆる12星座です。さらに12星座は、火、地、風、水の4つのエレメンツに分類されます。『水界園丁』が生まれたとき、太陽の位置は水のエレメンツに属する蟹座にありました。ホロスコープ上の他の星を見てみると水と地の位置にある星が多く、火も控えめで風のエレメンツの星は1つだけと大きな偏りがあります。このことから、『水界園丁』は水と地の性質が強いと言えそうです。
 水の管轄は直感や感情です。また、形のないもの、ふわふわっとしたものを扱います。地は手触りなどの感覚や形のあるものや目に見えるものが管轄です。星の分布が水と地に偏っていることが『水界園丁』というタイトルにぴったりで、まずそこに驚きました。

 星と星との角度を見てみると月と天王星がかなりタイトなコンジャンクション(0度)を作っています。変化、オリジナリティ、革新を意味する天王星と感情を扱う月の重なりは、個性的な自由を表します。確かにこの本の見た目は個性的で、本文の紙は表と裏の手触りがはっきり違います。書体は活版印刷を思わせる明朝体で、文字一つ一つの際にインクが溜まったような薄い滲みがクラシックな雰囲気を出しています。
 木星と海王星もかなりタイトなスクエア(90度)を作っています。この形は一人が好きとかイメージが膨らむという意味を持ちます。この句集の持つ静けさと抒情的な雰囲気はこのアスペクトが効いているからかもしれません。俳句に使われている一つ一つの言葉は、過度に難しいとは思いません。日々の生活の中で使われている手触りのある言葉です。この言葉のチョイスは地のエレメンツの多さを思い出させます。それが十七音の塊となると水のエレメンツが扱う抒情に変わるのです。

芍薬の夢をはなれて雲平ら

 水のように薄く透ける花びらを持つ芍薬が芍薬で在るのは、夢で繋がれているから。夢から離れると水に戻って平らな雲になるのです。

岸田祐子


【執筆者プロフィール】
岸田祐子(きしだ・ゆうこ)
「ホトトギス」同人。第20回日本伝統俳句協会新人賞受賞。


↓岸田祐子さんの「ハイクノミカタ」(2025年4月〜8月連載)は、
バスケットボール漫画の金字塔『SLAM DUNK』に沿って俳句を読む企画🏀


関連記事