ハイクノミカタ

花臭木に蝶のせはしや浮かび沈み 本井英【季語=臭木の花(秋)】


花臭木に蝶のせはしや浮かび沈み

本井英 


クサギの花は、五つに細く裂ける可憐な白花と、それを支える真っ赤な萼が特徴的。名前のもとになっている悪臭は、葉っぱから発せられるもの。

花はいい香りがするので、昼間はチョウが、夕方は大型のガが飛来する。

のちにリンクする自解に、今日は前妻の命日であると書かれているので、芳香と悪臭を併せ持つ「花臭木」を自身に見立て、それでも近くにいつもいてくれる(=「浮かび沈み」)亡き妻のことを偲んでいるのだろう。

男性にとって、蝶はどこか異性を思うところがあるのかもしれないが、この「蝶」は闊達で働き者である。

ふらんす堂ホームページで連載されている「本井英の俳句日記」8月4日分より。(堀切克洋)



【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 雪が降る千人針をご存じか 堀之内千代【季語=雪(冬)】
  2. 死因の一位が老衰になる夕暮れにイチローが打つきれいな当たり 斉藤…
  3. 足指に押さへ編む籠夏炉の辺 余村光世【季語=夏炉(夏)】
  4. 恋さめた猫よ物書くまで墨すり溜めし 河東碧梧桐【季語=恋猫(春)…
  5. ひざにゐて猫涅槃図に間に合はず 有馬朗人【季語=涅槃図(春)…
  6. せんそうのもうもどれない蟬の穴 豊里友行【季語=父の日(夏)】
  7. 旅いつも雲に抜かれて大花野 岩田奎【季語=花野(秋)】
  8. 秋蝶の転校生のやうに来し 大牧広【季語=秋蝶(秋)】

おすすめ記事

  1. 【結社推薦句】コンゲツノハイク【2023年4月分】
  2. 春愁は人なき都会魚なき海 野見山朱鳥【季語=春愁(春)】
  3. 数へ日の残り日二日のみとなる 右城暮石【季語=数へ日(冬)】
  4. 倉田有希の「写真と俳句チャレンジ」【第5回】
  5. 神保町に銀漢亭があったころ【第75回】近江文代
  6. 蜩や久しぶりなる井の頭      柏崎夢香【季語=蜩(秋)】
  7. 真っ白な息して君は今日も耳栓が抜けないと言う 福田若之【季語=真っ白な息(冬)】
  8. 秋日澄み樹のいろ拾ひつづけたる 井越芳子【季語=秋日(秋)】
  9. 秋・紅茶・鳥はきよとんと幸福に 上田信治【季語=秋(秋)】
  10. 毛糸玉秘密を芯に巻かれけり 小澤克己【季語=毛糸玉(冬)】

Pickup記事

  1. 天高し風のかたちに牛の尿 鈴木牛後【季語=天高し(秋)】
  2. 【冬の季語】立冬
  3. 【#38】山口誓子「汽罐車」連作の学術研究とモンタージュ映画
  4. 【春の季語】雛飾(雛飾り)
  5. 個室のやうな明るさの冬来る 廣瀬直人【季語=冬来る(冬)】
  6. 底冷えを閉じ込めてある飴細工 仲田陽子【季語=底冷(冬)】
  7. 海外のニュースの河馬が泣いていた 木田智美【無季】
  8. 【新年の季語】去年今年
  9. 【夏の季語】【秋の季語?】ピーマン
  10. うつくしき羽子板市や買はで過ぐ 高浜虚子【季語=羽子板市(冬)】
PAGE TOP