【夏の季語】蟻

【夏の季語=三夏(5〜7月)】蟻

人間にとって身近な虫のひとつ。

童話「アリとキリギリス」にも語られているように、夏場に餌を集めるため、炎天下などでも活発に活動しているところをよく見かける。

「蟻の道」は、延々と列を作って進むこと。

「蟻の塔」や「蟻塚」は、地面を掘って巣をつくるときにできる塚のようなもの。

地中に籠っていた「蟻」たちが、巣穴から出てくることは「蟻穴を出づ」という言い方で春の季語とされる。


【蟻(上五)】
夜の蟻迷へるものは弧を描く 中村草田男
蟻の穴出も入りもせぬ蟻一匹 飯島晴子
山の蟻叫びて木より落ちにけり 大串章
蟻の列巣穴近づき乱れけり 庄田ひろふみ

【蟻(中七)】
しばらくは箒目に蟻したがへり 本宮哲郎
東京や涙が蟻になってゆく 峠谷清広
さんざんな目に遭ひし蟻訴へず 矢島渚男
ひとまはり小さき蟻の蟻の道 岸本尚毅
恍惚と蟻に食はれて家斃る 冨田拓也
昇進も蟻もそれほど気にならぬ 舘野まひろ
絶えず強光やはらかな蟻の中までも 板倉ケンタ

【蟻(下五)】
こまごまと大河のごとく蟻の列 深見けん二
大揺れのもののおもてを蟻の道 千葉皓史
よくはたらく我も毒餌を曳く蟻も 鈴木牛後
私を登つてきたる蟻の列 石田郷子

【ほかの季語と】
どどどどと螢袋に蟻騒ぐぞ 金子兜太
蟻の上をのぼりて蟻や百合の中 岡田一実



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