永遠のステンドグラス秋日濃し 坊城俊樹【季語=秋日(秋)】


永遠のステンドグラス秋日濃し

坊城俊樹

10月に入ったが、まだ30度超す真夏日が続く。今週は仕事で幕張へ何回か出かけた。国立から幕張へは、中央線・京葉線で行く方法と中央線・武蔵野線で行く方法がある。最短距離で行くならば東京駅で京葉線に乗り換えるのだが、京葉線の乗り場まで駅構内を15分程度歩かなければならない。武蔵野線は駅構内をそれほど歩くことはないが、路線が埼玉県を経由するので、乗車している時間が長い。どちらの方法も一長一短なので、武蔵野線と京葉線を1日ごとに変えることにした。

今日は京葉線の番であったので、東京駅で中央線から京葉線乗り場までエスカレーターと動く歩道を利用しつつテクテクと歩いた。そこで気付いたのが、途中のエスカレーターを降りたところに大きなステンドグラスがあった。このステンドグラスは、「天地創造」というタイトルが付けられ、縦5メートル、横9メートルの巨大なものであった。1972年、鉄道100年記念事業の一つとして当時の国鉄総裁がパブリックアートを提案し、洋画家福沢一郎氏の原画をもとに作成されたようだ。当時は総武快速線への中央通路に設置されていたが、東京駅丸の内復元事業により京葉線通路側壁に移設されたらしい。

永遠のステンドグラス秋日濃し  坊城俊樹

「永遠のステンドグラス」は、まさに東京駅のステンドグラス「天地創造」を彷彿させる。「天地創造」は駅構内に設置されているので秋日濃しではないが、ステンドグラスの紅や黄色、青色、紫色などはバックライトに照らされ幻想的に輝く。今朝、このステンドグラスをエスカレーターの上から見つけた時に、早朝の眠い眼が右脳を刺激されぱっちりと開いた気がした。

さて毎度のことで恐縮だが、10月27日(日)17時30から稲畑汀子俳句集成読書会がオンライン配信される。今回のホストは花鳥主宰の坊城俊樹、テーマは「感情」である。お時間のある方は是非ご視聴ください。では良き週末を。

塚本武州



【執筆者プロフィール】
塚本武州(つかもと・ぶしゅう)
1969 年、立川市生まれ。書道家の父親が俳号「武州」を命名。茶道家の母親の影響で俳句を始める。2000年〜2006年までイギリス、フランス、2011年〜2020年までドイツ、シンガポール、台湾に駐在。帰国後、本格的に俳句を習い、2021年4月号より俳誌『ホトトギス』へ出句。現在、社会人学生として、京都芸術大学通信教育部文芸コース及び博物館学芸員課程を履修中。国立市在住。妻と白猫(ユキ)の3人暮らし。



【塚本武州のバックナンバー】
>>〔87〕角切の鹿苑にある静と動 酒井湧水
>>〔86〕今もある須磨療養所獺祭忌 橋本蝸角
>>〔85〕ゴーヤチャンプルなるやうにしかならぬ 広渡敬雄
>>〔84〕酒足りてゐるか新米まだあるか 西村麒麟
>>〔83〕十一人一人になりて秋の暮 正岡子規
>>〔82〕トラツクが西瓜畑に横づけに 小原大葉
>>〔81〕をとこをみな明日なきごとく踊るかな 下村梅子
>>〔80〕かなかなと鳴きまた人を悲します 倉田紘文
>>〔79〕巴里祭わが巴里の日も遠ざかる 能村登四郎
>>〔78〕マンゴー売るペットの鸚鵡肩に止め 服部郁史
>>〔77〕残る色明日にたゝみて花蓮 佐藤冨士男
>>〔76〕萎れしを提げて朝顔市帰り 鷹羽狩行
>>〔75〕半夏蛸とは化けて出る蛸かとも 後藤比奈夫
>>〔74〕ゴルファーを一擲したる雷雨かな 鈴木油山
>>〔73〕彼が下げ夕張メロン上京す 太田うさぎ
>>〔72〕頭を垂れて汗の男ら堂に満つ 高山れおな
>>〔71〕子燕のこぼれむばかりこぼれざる 小澤實
>>〔70〕橋立も歩けば長し松落葉 高林蘇城
>>〔69〕夕餉まで少し間のあり額の花 片山由美子
>>〔68〕仕切り繰返す間も掃き五月場所 鷹羽狩行
>>〔67〕熟れ麦はほろびのひかり夕日また 石原舟月
>>〔66〕さうらしく見えてだんだん鴉の巣 大畑善昭
>>〔65〕浜風のほどよき強さ白子干す 橋川かず子
>>〔64〕うららかや空より青き流れあり 阿部みどり女
>>〔63〕蜃気楼博士ばかりが現れし 阪西敦子
>>〔62〕山桜見て居ればつく渡舟かな 波多野晋平
>>〔61〕雁かへる方や白鷺城かたむく 萩原麦草
>>〔60〕流氷や宗谷の門波荒れやまず 山口誓子
>>〔59〕杉の花はるばる飛べり杉のため 山田みづえ
>>〔58〕エッフェル塔見ゆる小部屋に雛飾り 柳田静爾楼
>>〔57〕三月の旅の支度にパスポート 千原草之
>>〔56〕春一番競馬新聞空を行く 水原春郎
>>〔55〕いつ渡そバレンタインのチョコレート 田畑美穂女
>>〔54〕針供養といふことをしてそと遊ぶ 後藤夜半
>>〔53〕屋根の上に明るき空やパリの春 コンラツド・メイリ
>>〔52〕雪が来るうさぎの耳とうさぎの目 青柳志解樹
>>〔51〕真っ白な息して君は今日も耳栓が抜けないと言う 福田若之
>>〔50〕什器全て鈍器に見えて冬籠 今井聖

関連記事