ハイクノミカタ

三人のふだんの友と月見かな　鈴木花蓑【季語＝月見（秋）】

穴惑刃の如く若かりき　飯島晴子【季語＝穴惑（秋）】

猿のように抱かれ干しいちじくを欲る　金原まさ子【季語＝いちじく（秋）】

骨良しとした私春へ足　平田修【季語＝春（春）】

ぬかるみか葛かわからぬものを踏む　板倉ケンタ【季語＝葛（秋）】

皆出かけスポーツの日の大あくび　葛原由起【季語＝スポーツの日（秋）】

何これは痩せても枯れても式部の実　川崎展宏【季語＝式部の実（秋）】

遠方とは馬のすべてでありにけり　阿部完市

天国が見たくて変える椅子の向き　加藤久子

蓬から我が白痴出て遊びけり　平田修【季語＝蓬（春）】

大鯉のぎいと廻りぬ秋の昼　岡井省二【季語＝秋の昼（秋）】

破蓮泥の匂ひの生き生きと　奥村里【季語＝破蓮（秋）】

教科書の死角に小鳥来てをりぬ　嵯峨根鈴子【季語＝小鳥来る（秋）】

何処から来たの何処へ行くのと尋ね合う　佐藤みさ子

恋ふる夜は瞳のごとく月ぬれて　成瀬正とし【季語＝月（秋）】

紙相撲かたんと釣瓶落しかな　金子敦【季語＝釣瓶落し（秋）】

ひさびさの雨に上向き草の花　荒井桂子【季語＝草の花（秋）】

巻貝死すあまたの夢を巻きのこし　三橋鷹女

秋の日が終る抽斗をしめるやうに　有馬朗人【季語＝秋の日（秋）】

真夜中は幼稚園へとつづく紐　橋爪志保

虫の夜を眠る乳房を手ぐさにし　山口超心鬼【季語＝虫の夜（秋）】

五体ほど良く流れさくら見えて来た　平田修【季語＝さくら（春）】

蜻蛉のわづかなちから指を去る　しなだしん【季語＝蜻蛉（秋）】

月天心夜空を軽くしてをりぬ　涌羅由美【季語＝月（秋）】

枝豆歯のない口で人の好いやつ　渥美清【季語＝枝豆（秋）】

落栗やなにかと言へばすぐ谺　芝不器男【季語＝落栗（秋）】

星のかわりに巡ってくれる　暮田真名

星が生まれる魚が生まれるはやさかな　大石雄介

赤富士のやがて人語を許しけり　鈴木貞雄【季語＝赤富士（夏）】

目の合へば笑み返しけり秋の蛇　笹尾清一路【季語＝秋の蛇（秋）】

手をあげて此世の友は来りけり　三橋敏雄

よそ行きをまだ脱がずゐる星月夜　西山ゆりこ【季語＝星月夜（秋）】

たましいも母の背鰭も簾越し　石部明

戀の數ほど新米を零しけり　島田牙城【季語＝新米（秋）】

秋や秋や晴れて出ているぼく恐い　平田修【季語＝秋晴（秋）】

コスモスの風ぐせつけしまま生けて　和田華凛【季語＝コスモス（秋）】

ありのみの一糸まとはぬ甘さかな　松村史基【季語＝ありのみ（秋）】

職捨つる九月の海が股の下　黒岩徳将【季語＝九月（秋）】

葛の葉を黙読の目が追ひかける　鴇田智哉【季語＝葛（秋）】

冷蔵庫どうし相撲をとりなさい　石田柊馬

霧まとひをりぬ男も泣きやすし　清水径子【季語＝霧（秋）】

【林檎の本＃4】『言の葉配色辞典』　（インプレス刊、2024年）

ゆく春や心に秘めて育つもの　松尾いはほ【季語＝ゆく春（春）】

優曇華や昨日の如き熱の中　石田波郷【季語＝優曇華（夏）】

足浸す流れかなかなまたかなかな　ふけとしこ【季語＝かなかな（秋）】

桃食うて煙草を喫うて一人旅　星野立子【季語＝桃（秋）】

天高し吹いてをるともをらぬとも　若杉朋哉【季語＝天高し（秋）】

天に地に鶺鴒の尾の触れずあり　本間まどか【季語＝鶺鴒（秋）】

山よりの日は金色に今年米　成田千空【季語＝今年米（秋）】

ここも又好きな景色に秋の海　稲畑汀子【季語＝秋の海（秋）】

楡も墓も想像されて戦ぎけり　澤好摩

涼新た昨日の傘を返しにゆく　津川絵理子【季語＝涼新た（秋）】

修道女の眼鏡ぎんぶち蔦かづら　木内縉太【季語＝蔦かづら（秋）】

嘘も厭さよならも厭ひぐらしも　坊城俊樹【季語＝ひぐらし（秋）】

ここを梅とし淵の淵にて晴れている　平田修【季語＝梅（春）】

冷汗もかき本当の汗もかく　後藤立夫【季語＝汗（夏）】

涼しき灯すゞしけれども哀しき灯　久保田万太郎【季語＝涼し（夏）】

ここ迄来てしまつて急な手紙書いてゐる　尾崎放哉

離職者が荷をまとめたる夜の秋　川原風人【季語＝夜の秋（夏）】

天上の恋をうらやみ星祭　高橋淡路女【季語＝星祭（秋）】

無職快晴のトンボ今日どこへ行こう　平田修【季語＝トンボ（秋）】

やはらかき土に出くはす螇蚸かな　遠藤容代【季語＝螇蚸（秋）】

汗の人ギユーツと眼つむりけり　京極杞陽【季語＝汗（夏）】

広島や卵食ふ時口ひらく　西東三鬼

思ひ出も金魚の水も蒼を帯びぬ　中村草田男【季語＝金魚（夏）】

筆先の紫紺の果ての夜光虫　有瀬こうこ【季語＝夜光虫（夏）】

熱砂駆け行くは恋する者ならん　三好曲【季語＝熱砂（夏）】

我が霜におどろきながら四十九へ　平田修【季語＝霜（冬）】

どうどうと山雨が嬲る山紫陽花　長谷川かな女【季語＝紫陽花（夏）】

苺まづ口にしショートケーキかな　高濱年尾【季語＝苺（夏）】

水羊羹のなかに棲みたる遠さかな　佐々木紺【季語＝水羊羹（夏）】

どの部屋に行つても暇や夏休み　西村麒麟【季語＝夏休み（夏）】

夏帽子大きく振りて角曲がる　大角泰子【季語＝夏帽子（夏）】

空蟬より俺寒くこわれ出ていたり　平田修【季語＝空蟬（夏）】

短夜をあくせくけぶる浅間哉　一茶【季語＝短夜（夏）】

夕立の真只中を走り抜け　高濱年尾【季語＝夕立（夏）】

水蜘蛛を孕むまぶしい仮眠かな　未補【季語＝水蜘蛛（夏）】

ハイビーム消して螢へ突込みぬ　岩田奎【季語＝螢（夏）】

闇よりも山大いなる晩夏かな　飯田龍太【季語＝晩夏（夏）】

恋となる日数に足らぬ祭かな　いのうえかつこ【季語＝祭（夏）】

換気しながら元気な梅でいる　平田修【季語＝梅（春）】

蟬しぐれ麵に生姜の紅うつり　若林哲哉【季語＝蟬しぐれ（夏）】

宿よりは遠くはゆかず夜の秋　高橋すゝむ【季語＝夜の秋（夏）】

蚊帳吊草辿れば少女の骨の闇　冬野虹【季語＝蚊帳吊草（夏）】

夏夕べ撫でつつ洗ふ母の足　柴田佐知子【季語＝夏夕べ（夏）】

子午線の町の風波梅雨に入る　友岡子郷【季語＝梅雨に入る（夏）】

彼とあう日まで香水つけっぱなし　鎌倉佐弓【季語＝香水（夏）】

手のひらにまだ海匂ふ昼寝覚　阿部優子【季語＝昼寝（夏）】

ゆかた着のとけたる帯を持ちしまま　飯田蛇笏【季語＝浴衣（夏）】

章魚濁るむかしむかしの傷のいろ　瀬間陽子【季語＝章魚（夏）】

かたつむり会社黙つて休みけり　加藤静夫【季語＝かたつむり（夏）】

夏の風子の手吊環にとどきたる　大井雅人【季語＝夏の風（夏）】

遠縁のをんなのやうな草いきれ　長谷川双魚【季語＝草いきれ（夏）】

あじさいの枯れとひとつにし秋へと入る　平田修【季語＝秋（秋）】

はらはらと水ふり落とし滝聳ゆ　桐山太志【季語＝滝（夏）】

明日のなきかに短夜を使ひけり　田畑美穂女【季語＝短夜（夏）】

合歓の花ゆふぐれ僕が僕を泣かす　若林哲哉【季語＝合歓の花（夏）】

全員サングラス全員初対面　西生ゆかり【季語＝サングラス（夏）】

どこまでもこの世なりけり舟遊び　川崎雅子【季語＝舟遊び（夏）】

夕日へとふいとかけ出す青虫でいたり　平田修【季語＝青虫（秋）】

三人のふだんの友と月見かな 鈴木花蓑【季語＝月見（秋）】

穴惑刃の如く若かりき 飯島晴子【季語＝穴惑（秋）】

猿のように抱かれ干しいちじくを欲る 金原まさ子【季語＝いちじく（秋）】

骨良しとした私春へ足 平田修【季語＝春（春）】

ぬかるみか葛かわからぬものを踏む 板倉ケンタ【季語＝葛（秋）】

皆出かけスポーツの日の大あくび 葛原由起【季語＝スポーツの日（秋）】

何これは痩せても枯れても式部の実 川崎展宏【季語＝式部の実（秋）】

遠方とは馬のすべてでありにけり 阿部完市

天国が見たくて変える椅子の向き 加藤久子

蓬から我が白痴出て遊びけり 平田修【季語＝蓬（春）】

大鯉のぎいと廻りぬ秋の昼 岡井省二【季語＝秋の昼（秋）】

破蓮泥の匂ひの生き生きと 奥村里【季語＝破蓮（秋）】

教科書の死角に小鳥来てをりぬ 嵯峨根鈴子【季語＝小鳥来る（秋）】

何処から来たの何処へ行くのと尋ね合う 佐藤みさ子

恋ふる夜は瞳のごとく月ぬれて 成瀬正とし【季語＝月（秋）】

紙相撲かたんと釣瓶落しかな 金子敦【季語＝釣瓶落し（秋）】

ひさびさの雨に上向き草の花 荒井桂子【季語＝草の花（秋）】

巻貝死すあまたの夢を巻きのこし 三橋鷹女

秋の日が終る抽斗をしめるやうに 有馬朗人【季語＝秋の日（秋）】

真夜中は幼稚園へとつづく紐 橋爪志保

虫の夜を眠る乳房を手ぐさにし 山口超心鬼【季語＝虫の夜（秋）】

五体ほど良く流れさくら見えて来た 平田修【季語＝さくら（春）】

蜻蛉のわづかなちから指を去る しなだしん【季語＝蜻蛉（秋）】

月天心夜空を軽くしてをりぬ 涌羅由美【季語＝月（秋）】

枝豆歯のない口で人の好いやつ 渥美清【季語＝枝豆（秋）】

落栗やなにかと言へばすぐ谺 芝不器男【季語＝落栗（秋）】

星のかわりに巡ってくれる 暮田真名

星が生まれる魚が生まれるはやさかな 大石雄介

赤富士のやがて人語を許しけり 鈴木貞雄【季語＝赤富士（夏）】

目の合へば笑み返しけり秋の蛇 笹尾清一路【季語＝秋の蛇（秋）】

手をあげて此世の友は来りけり 三橋敏雄

よそ行きをまだ脱がずゐる星月夜 西山ゆりこ【季語＝星月夜（秋）】

たましいも母の背鰭も簾越し 石部明

戀の數ほど新米を零しけり 島田牙城【季語＝新米（秋）】

秋や秋や晴れて出ているぼく恐い 平田修【季語＝秋晴（秋）】

コスモスの風ぐせつけしまま生けて 和田華凛【季語＝コスモス（秋）】

ありのみの一糸まとはぬ甘さかな 松村史基【季語＝ありのみ（秋）】

職捨つる九月の海が股の下 黒岩徳将【季語＝九月（秋）】

葛の葉を黙読の目が追ひかける 鴇田智哉【季語＝葛（秋）】

冷蔵庫どうし相撲をとりなさい 石田柊馬

霧まとひをりぬ男も泣きやすし 清水径子【季語＝霧（秋）】

【林檎の本＃4】『言の葉配色辞典』 （インプレス刊、2024年）

ゆく春や心に秘めて育つもの 松尾いはほ【季語＝ゆく春（春）】

優曇華や昨日の如き熱の中 石田波郷【季語＝優曇華（夏）】

足浸す流れかなかなまたかなかな ふけとしこ【季語＝かなかな（秋）】

桃食うて煙草を喫うて一人旅 星野立子【季語＝桃（秋）】

天高し吹いてをるともをらぬとも 若杉朋哉【季語＝天高し（秋）】

天に地に鶺鴒の尾の触れずあり 本間まどか【季語＝鶺鴒（秋）】

山よりの日は金色に今年米 成田千空【季語＝今年米（秋）】

ここも又好きな景色に秋の海 稲畑汀子【季語＝秋の海（秋）】

楡も墓も想像されて戦ぎけり 澤好摩

涼新た昨日の傘を返しにゆく 津川絵理子【季語＝涼新た（秋）】

修道女の眼鏡ぎんぶち蔦かづら 木内縉太【季語＝蔦かづら（秋）】

嘘も厭さよならも厭ひぐらしも 坊城俊樹【季語＝ひぐらし（秋）】

ここを梅とし淵の淵にて晴れている 平田修【季語＝梅（春）】

冷汗もかき本当の汗もかく 後藤立夫【季語＝汗（夏）】

涼しき灯すゞしけれども哀しき灯 久保田万太郎【季語＝涼し（夏）】

ここ迄来てしまつて急な手紙書いてゐる 尾崎放哉

離職者が荷をまとめたる夜の秋 川原風人【季語＝夜の秋（夏）】

天上の恋をうらやみ星祭 高橋淡路女【季語＝星祭（秋）】

無職快晴のトンボ今日どこへ行こう 平田修【季語＝トンボ（秋）】

やはらかき土に出くはす螇蚸かな 遠藤容代【季語＝螇蚸（秋）】

汗の人ギユーツと眼つむりけり 京極杞陽【季語＝汗（夏）】

広島や卵食ふ時口ひらく 西東三鬼

思ひ出も金魚の水も蒼を帯びぬ 中村草田男【季語＝金魚（夏）】

筆先の紫紺の果ての夜光虫 有瀬こうこ【季語＝夜光虫（夏）】

熱砂駆け行くは恋する者ならん 三好曲【季語＝熱砂（夏）】

我が霜におどろきながら四十九へ 平田修【季語＝霜（冬）】

どうどうと山雨が嬲る山紫陽花 長谷川かな女【季語＝紫陽花（夏）】

苺まづ口にしショートケーキかな 高濱年尾【季語＝苺（夏）】

水羊羹のなかに棲みたる遠さかな 佐々木紺【季語＝水羊羹（夏）】

どの部屋に行つても暇や夏休み 西村麒麟【季語＝夏休み（夏）】

夏帽子大きく振りて角曲がる 大角泰子【季語＝夏帽子（夏）】

空蟬より俺寒くこわれ出ていたり 平田修【季語＝空蟬（夏）】

短夜をあくせくけぶる浅間哉 一茶【季語＝短夜（夏）】

夕立の真只中を走り抜け 高濱年尾【季語＝夕立（夏）】

水蜘蛛を孕むまぶしい仮眠かな 未補【季語＝水蜘蛛（夏）】

ハイビーム消して螢へ突込みぬ 岩田奎【季語＝螢（夏）】

闇よりも山大いなる晩夏かな 飯田龍太【季語＝晩夏（夏）】

三人のふだんの友と月見かな　鈴木花蓑【季語＝月見（秋）】

穴惑刃の如く若かりき　飯島晴子【季語＝穴惑（秋）】

猿のように抱かれ干しいちじくを欲る　金原まさ子【季語＝いちじく（秋）】

骨良しとした私春へ足　平田修【季語＝春（春）】

ぬかるみか葛かわからぬものを踏む　板倉ケンタ【季語＝葛（秋）】

皆出かけスポーツの日の大あくび　葛原由起【季語＝スポーツの日（秋）】

何これは痩せても枯れても式部の実　川崎展宏【季語＝式部の実（秋）】

遠方とは馬のすべてでありにけり　阿部完市

天国が見たくて変える椅子の向き　加藤久子

蓬から我が白痴出て遊びけり　平田修【季語＝蓬（春）】

大鯉のぎいと廻りぬ秋の昼　岡井省二【季語＝秋の昼（秋）】

破蓮泥の匂ひの生き生きと　奥村里【季語＝破蓮（秋）】

教科書の死角に小鳥来てをりぬ　嵯峨根鈴子【季語＝小鳥来る（秋）】

何処から来たの何処へ行くのと尋ね合う　佐藤みさ子

恋ふる夜は瞳のごとく月ぬれて　成瀬正とし【季語＝月（秋）】

紙相撲かたんと釣瓶落しかな　金子敦【季語＝釣瓶落し（秋）】

ひさびさの雨に上向き草の花　荒井桂子【季語＝草の花（秋）】

巻貝死すあまたの夢を巻きのこし　三橋鷹女

秋の日が終る抽斗をしめるやうに　有馬朗人【季語＝秋の日（秋）】

真夜中は幼稚園へとつづく紐　橋爪志保

虫の夜を眠る乳房を手ぐさにし　山口超心鬼【季語＝虫の夜（秋）】

五体ほど良く流れさくら見えて来た　平田修【季語＝さくら（春）】

蜻蛉のわづかなちから指を去る　しなだしん【季語＝蜻蛉（秋）】

月天心夜空を軽くしてをりぬ　涌羅由美【季語＝月（秋）】

枝豆歯のない口で人の好いやつ　渥美清【季語＝枝豆（秋）】

落栗やなにかと言へばすぐ谺　芝不器男【季語＝落栗（秋）】

星のかわりに巡ってくれる　暮田真名

星が生まれる魚が生まれるはやさかな　大石雄介

赤富士のやがて人語を許しけり　鈴木貞雄【季語＝赤富士（夏）】

目の合へば笑み返しけり秋の蛇　笹尾清一路【季語＝秋の蛇（秋）】

手をあげて此世の友は来りけり　三橋敏雄

よそ行きをまだ脱がずゐる星月夜　西山ゆりこ【季語＝星月夜（秋）】

たましいも母の背鰭も簾越し　石部明

戀の數ほど新米を零しけり　島田牙城【季語＝新米（秋）】

秋や秋や晴れて出ているぼく恐い　平田修【季語＝秋晴（秋）】

コスモスの風ぐせつけしまま生けて　和田華凛【季語＝コスモス（秋）】

ありのみの一糸まとはぬ甘さかな　松村史基【季語＝ありのみ（秋）】

職捨つる九月の海が股の下　黒岩徳将【季語＝九月（秋）】

葛の葉を黙読の目が追ひかける　鴇田智哉【季語＝葛（秋）】

冷蔵庫どうし相撲をとりなさい　石田柊馬

霧まとひをりぬ男も泣きやすし　清水径子【季語＝霧（秋）】

【林檎の本＃4】『言の葉配色辞典』　（インプレス刊、2024年）

ゆく春や心に秘めて育つもの　松尾いはほ【季語＝ゆく春（春）】

優曇華や昨日の如き熱の中　石田波郷【季語＝優曇華（夏）】

足浸す流れかなかなまたかなかな　ふけとしこ【季語＝かなかな（秋）】

桃食うて煙草を喫うて一人旅　星野立子【季語＝桃（秋）】

天高し吹いてをるともをらぬとも　若杉朋哉【季語＝天高し（秋）】

天に地に鶺鴒の尾の触れずあり　本間まどか【季語＝鶺鴒（秋）】

山よりの日は金色に今年米　成田千空【季語＝今年米（秋）】

ここも又好きな景色に秋の海　稲畑汀子【季語＝秋の海（秋）】

楡も墓も想像されて戦ぎけり　澤好摩

涼新た昨日の傘を返しにゆく　津川絵理子【季語＝涼新た（秋）】

修道女の眼鏡ぎんぶち蔦かづら　木内縉太【季語＝蔦かづら（秋）】

嘘も厭さよならも厭ひぐらしも　坊城俊樹【季語＝ひぐらし（秋）】

ここを梅とし淵の淵にて晴れている　平田修【季語＝梅（春）】

冷汗もかき本当の汗もかく　後藤立夫【季語＝汗（夏）】

涼しき灯すゞしけれども哀しき灯　久保田万太郎【季語＝涼し（夏）】

ここ迄来てしまつて急な手紙書いてゐる　尾崎放哉

離職者が荷をまとめたる夜の秋　川原風人【季語＝夜の秋（夏）】

天上の恋をうらやみ星祭　高橋淡路女【季語＝星祭（秋）】

無職快晴のトンボ今日どこへ行こう　平田修【季語＝トンボ（秋）】

やはらかき土に出くはす螇蚸かな　遠藤容代【季語＝螇蚸（秋）】

汗の人ギユーツと眼つむりけり　京極杞陽【季語＝汗（夏）】

広島や卵食ふ時口ひらく　西東三鬼

思ひ出も金魚の水も蒼を帯びぬ　中村草田男【季語＝金魚（夏）】

筆先の紫紺の果ての夜光虫　有瀬こうこ【季語＝夜光虫（夏）】

熱砂駆け行くは恋する者ならん　三好曲【季語＝熱砂（夏）】

我が霜におどろきながら四十九へ　平田修【季語＝霜（冬）】

どうどうと山雨が嬲る山紫陽花　長谷川かな女【季語＝紫陽花（夏）】

苺まづ口にしショートケーキかな　高濱年尾【季語＝苺（夏）】

水羊羹のなかに棲みたる遠さかな　佐々木紺【季語＝水羊羹（夏）】

どの部屋に行つても暇や夏休み　西村麒麟【季語＝夏休み（夏）】

夏帽子大きく振りて角曲がる　大角泰子【季語＝夏帽子（夏）】

空蟬より俺寒くこわれ出ていたり　平田修【季語＝空蟬（夏）】

短夜をあくせくけぶる浅間哉　一茶【季語＝短夜（夏）】

夕立の真只中を走り抜け　高濱年尾【季語＝夕立（夏）】

水蜘蛛を孕むまぶしい仮眠かな　未補【季語＝水蜘蛛（夏）】

ハイビーム消して螢へ突込みぬ　岩田奎【季語＝螢（夏）】

闇よりも山大いなる晩夏かな　飯田龍太【季語＝晩夏（夏）】

恋となる日数に足らぬ祭かな　いのうえかつこ【季語＝祭（夏）】