【夏の季語】蛍


【夏の季語(仲夏=6月)】蛍

5月から6月ごろにかけて観察することができる。

日本には約50種の蛍が生息しているものの、水生はゲンジボタル、ヘイケボタル、クメジマボタルの3種のみ。「蛍」といえば、一般的には、里山的環境に生息しているゲンジボタルか、ヘイケボタルを指す。


【蛍(上五)】
蛍もう別の生きもの日が射せば  桂信子
螢とび疑ひぶかき親の箸 飯島晴子
螢とび疑ひぶかき親の箸 飯島晴子

【蛍(中七)】
男欲し昼の蛍の掌に匂ふ 小坂順子
約束の蛍になつて来たと言ふ 真鍋呉夫
また痩せて蛍のにおいする褥  澁谷道
ゆめのなか蛍の川は熱かりし  澁谷道
身の奥の奥に蛍を詰めてゆく 平田修
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの  池田澄子

【蛍(下五)】
まどごしに與へ去りたる螢かな 久保より江
この人のうしろおびただしき螢 飯島晴子
姿見に入つてゆくし螢かな  真鍋呉夫
みぞおちを照らしに来たる大螢  柿本多映
かなしみへけん命になる螢でいる 平田修
ぬばたまの大地溝帯を飛ぶ螢  櫂未知子

【蛍火】
はかなさはいづれ衣の香と蛍火と  桂信子
より強き蛍火となり逃れたる  岡本 眸
おのづから籠の形を螢火は  鷹羽狩行

【蛍の夜】
ふるさとに蛍の夜あること愉し 深川正一郎
ゆるやかに着てひとと逢ふ螢の夜 桂信子

【恋蛍】
恋蛍ひとつ乳房の間に入れ 仙田洋子

【蛍籠】
みすずかる信濃は大き蛍籠 伊藤伊那男
風通るベビーベッドと蛍籠 神野紗希

【その他】
蛍火におぼるるごとし桜桃忌 石川桂郎
螢・蝶・空蟬この世に遅れ着く 齋藤愼爾


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