【春の季語=仲春(3月)】啓蟄
「立春」を1番目とする二十四節気における3番目。「けいちつ」と読む。
現在広まっている定気法では太陽黄経が345度のときで、新暦だと3月5日、6日ごろである。期間としては、期間としては、この日から、次の節気の「春分」前日までを指す。
「啓」は「開く」、「蟄」は「虫などが土中に隠れ閉じこもる」意味。「冬籠りをしていた虫たちが土から這い出てくる」という意を示す。「蟻穴を出づ」のような春の季語もある。
【啓蟄(上五)】
啓蟄のつちくれ躍り掃かれけり 吉岡禅寺洞
啓蟄の土洞然と開きけり 阿波野青畝
啓蟄の一人が転けたではないか 永田耕衣
啓蟄や野を男行く画架提げて 小池文子
啓蟄の土まだ覚めず父の墓 古賀まり子
啓蟄の何も出て来ぬ日も来るとか 宗田安正
啓蟄の朱肉ゆるびてゐたりけり 柿本多映
啓蟄や屋根くろぐろと寺の町 鷹羽狩行
啓蟄の十指に風を通しけり 嶋田麻紀
啓蟄や達磨たくさんある食堂 雪我狂流
啓蟄のとぐろを卷いてゐる風よ 島田牙城
啓蟄や木の影太き水の底 柴田美佐
啓蟄をかがやきまさるわが三角州 櫂未知子
啓蟄のつぎつぎ来たる患者かな 森羽久衣
啓蟄や日の差してゐる兎小屋 涼野海音
【啓蟄(中七)】
塵取に啓蟄の虫あるあはれ 林翔
縄とびの縄啓蟄の地を叩く 辻田克巳
にはとりの啓蟄の何啄むや 根岸善雄
永らへて啓蟄のわが誕生日 深見けん二
伸びるだけのび啓蟄の象の鼻 岩淵喜代子
【啓蟄(下五)】
犬耳を立て土を嗅ぐ啓蟄に 高浜虚子
【ほかの季語と】
雨水より啓蟄までのあたたかさ 後藤夜半
【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】