冬の季語

【冬の季語】鮟鱇

【冬の季語=三冬(11〜1月)】鮟鱇

アンコウは、冷たい荒波に揉まれることで引き締まった身となる。

地方にもよるが、11月中旬ごろから水揚げがはじまる。

深海魚であるアンコウの皮はぬめりがあるため、昔から「吊るし切り」が一般的。

頭と骨以外は全て食べられるアンコウの部位は7種類にわかれる。ヒレ(トモ)、皮、エラ、肝臓、胃袋、ヌノ(卵巣)、身(柳肉)は、アンコウの「7つ道具」とも呼ばれる。

「唐揚げ」や「鮟鱇鍋」にして食べるが、とくに肝は「あん肝」と呼ばれて重宝される。


【鮟鱇(上五)】
鮟鱇をふりさけ見れば厨かな 其角
鮟鱇の愚にして咎はなかりけり 村上鬼城
鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる 加藤楸邨
大鮟鱇べたりと置かれ箱の中  加藤瑠璃子
鮟鱇の句ばかり詠んでまだ食はず 大串章
大鮟鱇触つてみれば女体かな 矢島渚男
鮟鱇のややこしき骨挵りけり 山尾玉藻
鮟鱇のくちびるらしき呑み込みぬ 平石和美
鮟鱇の肝に箸入れ雪来るか 林佑子
鮟鱇と万年筆で書きにけり 山口東人
鮟鱇のその次の世も鮟鱇か 遠藤若狭男
鮟鱇の鉤のみ残る魚市場 片山一行
鮟鱇を喰らひ地獄に堕ちんかな 小澤實
鮟鱇の泥のごときを鍵釘に しなだしん
鮟鱇の部品となりて送らるる 佐藤郁良
鮟鱇の夢さばかれた白図面 豊里友行
鮟鱇の死後がずるずるありにけり 西村麒麟

【鮟鱇(中七)】
能登の海鮟鱇あげて浪平ら 前田普羅
惨憺たる鮟鱇の顔今日終る 岸田稚魚
吊されし鮟鱇何か着せてやれ 鈴木鷹夫
エリックサティ鮟鱇の肝食ひをれば 大石悦子
身のうちに鮟鱇がゐる口あけて 奧坂まや
自転車につむ鮟鱇の尾が見えて 岸本尚毅

【鮟鱇(下五)】
夕鯵をまつ間わびしき鮟鱇かな 井上井月
舟釣瓶ぶつかけられし鮟鱇かな 阿波野青畝
ひと声で糶落とされし大鮟鱇 古市文子


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