【春の季語=晩春(4月)】桜
春の深まりを感じさせる落葉高木で、日本の国花に指定されている。
自生種・園芸種を含めて数百種類あるが、はらはらと散りゆくソメイヨシノがその代表とされる。
朝の桜は「朝桜」、夕方の桜は「夕桜」、夜の桜は「夜桜」と時間それぞれに趣がある。
なお、平安時代からの慣習で俳句でも「花」といえば、基本的には、桜のことを指す。
花が散り終わると、こんどは蘂が降るので、これを「桜蘂降る」という季語で呼び習わす。
「葉桜」は夏の季語。
【桜(上五)】
さくら仰ぎて雨男雨女 山上樹実雄
さくら咲く生者は死者に忘れられ 西村和子
桜咲く母校ならねどなつかしく 小川軽舟
桜さよなら狛犬は空を見て 近恵
【桜(中七)】
毛皮はぐ日中桜満開に 佐藤鬼房
かくも濃き桜吹雪に覚えなし 飯島晴子
いちめんの桜のなかを杖が来る 鴇田智哉
眠し眠し桜となつてゆくからだ 渡辺鮎太
【桜(下五)】
さまざまの事おもひ出す桜かな 松尾芭蕉
一本といふ華やぎにある桜 稲畑汀子
手をつけて海のつめたき桜かな 岸本尚毅
しばらくは湯の匂ひなる桜かな 照井翠
雑木冷えて高うなりたる桜かな 依光陽子
エリックのばかばかばかと桜降る 太田うさぎ
まだ固き教科書めくる桜かな 黒澤麻生子
【自由律】
無伴奏にして満開の桜だ 岡田幸生