連載・よみもの

「野崎海芋のたべる歳時記」和風ロールキャベツ


和風ロールキャベツ

Chou farci à la japonaise


昨春、わが家のベランダにキジバトが卵を産むという事件が発生しました。
最初の緊急事態宣言発出で、マンション管理や樹木メンテナンスなどの人の出入りが急に止んだタイミングでした。

室外機に小枝を一、二本置いただけで産卵し、後から何度か枝を運んできて足すというアバウトな巣作りぶり。
顔を横に向けてこちらをじっと見たり(目が横についているので)、羽ばたいて威嚇したり、近くで見ると存外大きくて、かわいい鳴き声に似ず怖かったです。

鳩に繁殖されてしまうのはマンションとしてはまずい事態なので、キジバト夫妻にははやく巣作り好適地へお引越し願わなければなりません。
ハンガーや空き缶を打ち鳴らして追い立てたところ、こんどは壁一枚隔てたお隣のベランダに出入りしはじめました。

隣室住人とは面識がなく、マンション管理室は緊急事態宣言で業務停止中。結局、
「はじめまして。うちから引っ越して行ったキジバトがそちらで巣を作ろうとしています」
という主旨の手紙を書いて郵便受けに投函するという、アナログな手段に頼ったのでした。後日
「ぶじ対処しました。ありがとうございました」
との返事がポストに入っていました。

今年もそろそろ巣作りの季節。昨年のようなことにならないよう、ベランダにやってくる鳥を注意して観察しています。

わが家のロールキャベツ。
たねは豚ひき肉にれんこんと生姜。おでん出汁で和風に煮ます。
柔らかい春キャベツで作るのが好きです。

鳥の巣に鳥が入つてゆくところ  波多野爽波

季語【鳥の巣】【巣づくり】【春キャベツ】

*本記事は野崎海芋さんのInstagram( @kaiunozaki )より、ご本人の許可を得て、転載させていただいております。本家インスタもぜひご覧ください。


【執筆者プロフィール】
野崎 海芋(のざき・かいう)
フランス家庭料理教室を主宰。 「澤」俳句会同人、小澤實に師事。平成20年澤新人賞受賞。平成29年第一句集『浮上』上梓。俳人協会会員。



【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 【連載】漢字という親を棄てられない私たち/井上泰至【第2回】
  2. 【新連載】茶道と俳句 井上泰至【第1回】
  3. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第14回】お茶の水と川崎展宏…
  4. 神保町に銀漢亭があったころ【第96回】中島憲武
  5. 【連載】もしあの俳人が歌人だったら Session#4
  6. 野崎海芋の「たべる歳時記」 七草粥
  7. 【読者参加型】コンゲツノハイクを読む【2022年10月分】
  8. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第43回】 淋代海岸と山口青…

おすすめ記事

  1. 【冬の季語】今朝の冬
  2. すきとおるそこは太鼓をたたいてとおる 阿部完市
  3. 【アンケート】東日本大震災から10年目を迎えて
  4. かなしきかな性病院の煙出 鈴木六林男
  5. 【冬の季語】冬うらら
  6. 【書評】人生の成分・こころの成分――上田信治『成分表』(素粒社、2022年)
  7. 神保町に銀漢亭があったころ【第14回】辻村麻乃
  8. 室咲きをきりきり締めて届きたり 蓬田紀枝子【季語=室咲(冬)】
  9. 草も木も人も吹かれてゐて涼し 日下野由季【季語=涼し(夏)】
  10. 一年の颯と過ぎたる障子かな 下坂速穂【季語=障子(冬)】

Pickup記事

  1. 【連載】歳時記のトリセツ(6)/岡田由季さん
  2. 俳句おじさん雑談系ポッドキャスト「ほぼ週刊青木堀切」【#3】
  3. どちらかと言へば麦茶の有難く  稲畑汀子【季語=麦茶(夏)】
  4. 【新年の季語】繭玉
  5. 「パリ子育て俳句さんぽ」【11月13日配信分】
  6. 湯の中にパスタのひらく花曇 森賀まり【季語=花曇(春)】
  7. 寒天煮るとろとろ細火鼠の眼 橋本多佳子【季語=寒天(冬)】
  8. 浅春の岸辺は龍の匂ひせる 対中いずみ【季語=亀浅春(春)】
  9. ものゝふの掟はしらず蜆汁 秦夕美【季語=蜆汁(春)】
  10. 祈るべき天と思えど天の病む 石牟礼道子
PAGE TOP