ハイクノミカタ

いつせいに振り向かれたり曼珠沙華 柏柳明子【季語=曼珠沙華(秋)】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

いつせいに振り向かれたり曼珠沙華

柏柳明子 


いっせいに振り向かれるのは、たとえば会議室や教室に遅刻して入ったときなど。見ているほうはそう思っていなくても、見られたほうは視線が刺さるように感じて、いたたまれなくなる。そのときと似たような「いたたまれなさ」を、整然と並んで咲く真っ赤な曼珠沙華のたたずまいに、作者は感じとった。「いつせいに」という出だしで勢いをつけたところが技巧で、読み手は「たくさんの曼珠沙華にじろりと睨まれている」とまあ、そんな光景をイメージせざるをえないから、いたたまれない。悪いことをしていないかどうか、ご先祖様が見守っているよ、などと言葉で言われるよりも、黙って赫赫と咲き続けている彼岸花のほうが、よほど身にしみる。ミシェル・フーコーが「パノプティコン」を通じて語った権力の内面化が、こんなところにもひそんでいる。『柔き棘』(2020)より。(堀切克洋)



【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 漕いで漕いで郵便配達夫は蝶に 関根誠子【季語=蝶(春)】
  2. やはらかきところは濡れてかたつむり 齋藤朝比古【季語=蝸牛(夏)…
  3. 季すぎし西瓜を音もなく食へり 能村登四郎【季語=西瓜(秋)】
  4. てつぺんにまたすくひ足す落葉焚 藺草慶子【季語=落葉焚(冬)】
  5. フラミンゴ同士暑がつてはをらず 後藤比奈夫【季語=暑し(夏)】
  6. 胎動に覚め金色の冬林檎 神野紗希【季語=冬林檎(冬)】
  7. 太宰忌や誰が喀啖の青みどろ 堀井春一郎【季語=太宰忌(夏)】
  8. 飯蛸に昼の花火がぽんぽんと 大野朱香【季語=飯蛸(春)】

あなたへのおすすめ記事

連載記事一覧

PAGE TOP