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いつせいに振り向かれたり曼珠沙華 柏柳明子【季語=曼珠沙華(秋)】

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いつせいに振り向かれたり曼珠沙華

柏柳明子 


いっせいに振り向かれるのは、たとえば会議室や教室に遅刻して入ったときなど。見ているほうはそう思っていなくても、見られたほうは視線が刺さるように感じて、いたたまれなくなる。そのときと似たような「いたたまれなさ」を、整然と並んで咲く真っ赤な曼珠沙華のたたずまいに、作者は感じとった。「いつせいに」という出だしで勢いをつけたところが技巧で、読み手は「たくさんの曼珠沙華にじろりと睨まれている」とまあ、そんな光景をイメージせざるをえないから、いたたまれない。悪いことをしていないかどうか、ご先祖様が見守っているよ、などと言葉で言われるよりも、黙って赫赫と咲き続けている彼岸花のほうが、よほど身にしみる。ミシェル・フーコーが「パノプティコン」を通じて語った権力の内面化が、こんなところにもひそんでいる。『柔き棘』(2020)より。(堀切克洋)



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