ハイクノミカタ

天体のみなしづかなる草いきれ 生駒大祐【季語=草いきれ(夏)】

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: eye-2horikiri--1024x538.png

天体のみなしづかなる草いきれ

生駒大祐


炎熱のなかの「草いきれ」を、はあはあ言いながら進んでいく時間は、宇宙を俯瞰して天体の運行を「みなしづか」と感じるのと、もっとも離れている時間、なのかもしれない。そうであればこそ、「天体のみなしづかなる」という把握のなかには、自分で書いた言葉を二重線で抹消してしまうような、そんな手つきが感じられる。天と地と、静と動と、矛盾するものをひとつにパックしてしまうことで、「しづかなる天体」の「動」、「草いきれ」の「静」の部分も際立つ。どちらにも共通しているのは、人間を拒むような「遠さ」である。『水界園丁』(2019)所収。(堀切克洋)



【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. しばらくは箒目に蟻したがへり 本宮哲郎【季語=蟻(夏)】
  2. 新綠を描くみどりをまぜてゐる 加倉井秋を【季語=新綠(夏)】
  3. 新道をきつねの風がすすんでゐる 飯島晴子【季語=狐(冬)】
  4. 追ふ蝶と追はれる蝶の入れ替はる 岡田由季【季語=蝶(春)】
  5. 一つづつ包むパイ皮春惜しむ 代田青鳥【季語=春惜しむ(春)】
  6. 刈草高く積み軍艦が見えなくなる 鴻巣又四郎【季語=草刈(夏)】
  7. 傾けば傾くまゝに進む橇     岡田耿陽【季語=橇(冬)】
  8. 燈台に銘あり読みて春惜しむ 伊藤柏翠【季語=春惜しむ(春)】

おすすめ記事

  1. とつぷりと後ろ暮れゐし焚火かな 松本たかし【季語=焚火(冬)】
  2. 江の島の賑やかな日の仔猫かな 遠藤由樹子【季語=仔猫(春)】
  3. 皮むけばバナナしりりと音すなり 犬星星人【季語=バナナ(夏)】
  4. 舌荒れてをり猟銃に油差す 小澤實【季語=猟銃(冬)】
  5. 「体育+俳句」【第2回】西山ゆりこ+ダンス
  6. 【連載】新しい短歌をさがして【2】服部崇
  7. 【書評】中沢新一・小澤實『俳句の海に潜る』(角川書店、2016年)
  8. どちらかと言へば麦茶の有難く  稲畑汀子【季語=麦茶(夏)】
  9. 【書評】鷲巣正徳 句集『ダヴィンチの翼』(私家版、2019年)
  10. 橘や蒼きうるふの二月尽 三橋敏雄【季語=二月尽(春)】

Pickup記事

  1. コンゲツノハイクを読む【2021年7月分】
  2. 行く春や鳥啼き魚の目は泪 芭蕉【季語=行く春(春)】
  3. 黄金週間屋上に鳥居ひとつ 松本てふこ【季語=黄金週間(夏)】
  4. 【読者参加型】コンゲツノハイクを読む【2022年9月分】
  5. 【春の季語】雛
  6. 三角形の 黒の物体の 裏側の雨 富沢赤黄男
  7. 【クラファン目標達成記念!】神保町に銀漢亭があったころリターンズ【6】/宇志やまと(「銀漢」同人)
  8. 春宵や光り輝く菓子の塔 川端茅舎【季語=春宵(春)】
  9. 吾も春の野に下りたてば紫に 星野立子【季語=春の野(春)】
  10. 【#26-4】愛媛県南予地方と宇和島の牛鬼(4)
PAGE TOP