ハイクノミカタ

ソーダ水方程式を濡らしけり 小川軽舟【季語=ソーダ水(夏)】

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: eye-2horikiri--1024x538.png

ソーダ水方程式を濡らしけり

小川軽舟

俳句は省略だとよくいわれるが、実は俳句は「比喩」でもある。この句でいうと、「方程式」が書かれた紙(ノートでも問題集でもいい)の「紙」が省略されたことで、方程式そのものがソーダ水で濡れてしまったように錯覚させるところが、ミソである。

現実には、「方程式」はロジックの一種であるから、本当は「濡らす」ことはできない。しかし、濡れてふやふやになった数式は、どこかたよりなく、代数的論理の絶対性のようなものまで、足場を失っているようだ。

「ソーダ水」だから、息子に勉強を教えている光景かもしれない。こぼしたのも息子だとするなら、おいおい何やってんだ、という作者(父親)の気持ちが浮かぶ一方で、そのように息子に勉強を教える機会自体が、炭酸水のようにはかなく、父親として愛しんでいるようにも思えてくる。

『近所』(2001)より。(堀切克洋)


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. クローバーや後髪割る風となり 不破 博【季語=クローバー(春…
  2. 柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺 正岡子規【季語=柿(秋)】
  3. 象の足しづかに上る重たさよ 島津亮
  4. 草も木も人も吹かれてゐて涼し 日下野由季【季語=涼し(夏)】
  5. 蟲鳥のくるしき春を不爲 高橋睦郎【季語=春(春)】
  6. 遠足や眠る先生はじめて見る 斉藤志歩【季語=遠足(春)】
  7. 退帆のディンギー跳ねぬ春の虹 根岸哲也【季語=春の虹(春)】
  8. 水の地球すこしはなれて春の月 正木ゆう子【季語=春の月(春)】

おすすめ記事

  1. 雀来て紅梅はまだこどもの木 成田千空【季語=紅梅(春)】
  2. 退帆のディンギー跳ねぬ春の虹 根岸哲也【季語=春の虹(春)】
  3. 白梅や粥の面てを裏切らむ 飯島晴子【季語=白梅(春)】
  4. 原爆忌誰もあやまつてはくれず 仙田洋子【季語=原爆忌(秋)】
  5. キャベツに刃花嫁衣裳は一度きり 山田径子【季語=キャベツ(夏)】
  6. 名ばかりの垣雲雀野を隔てたり 橋閒石【季語=雲雀野(春)】
  7. 最終回みたいな街に鯨来る 斎藤よひら【季語=鯨(冬)】
  8. 秋の餅しろたへの肌ならべけり 室生犀星【季語=秋の餅(秋)】
  9. カンバスの余白八月十五日 神野紗希【季語=終戦記念日(秋)】
  10. 馬の背中は喪失的にうつくしい作文だった。 石松佳

Pickup記事

  1. 【冬の季語】納豆
  2. 倉田有希の「写真と俳句チャレンジ」【第3回】
  3. 寒いねと彼は煙草に火を点ける 正木ゆう子【季語=寒い(冬)】
  4. 風の日や風吹きすさぶ秋刀魚の値 石田波郷【季語=秋刀魚(秋)】
  5. 神保町に銀漢亭があったころ【第37回】朽木直
  6. 【冬の季語】おでん
  7. ストーブに貌が崩れていくやうな 岩淵喜代子【季語=ストーブ(冬)】
  8. 神保町に銀漢亭があったころ【第67回】鷲巣正徳
  9. 【夏の季語】キャンプ/テント バンガロー キャンプ村 キャンプ場 キャンプファイヤー バーベキュー
  10. 【結社推薦句】コンゲツノハイク【2021年3月分】
PAGE TOP