【秋の季語】秋めく

【秋の季語=初秋〜仲秋(8月〜9月)】秋めく

【解説】

8月・9月はまだ暑い日が多いですが、そのようななかで秋の兆しが感じられるなあ、という微妙な感覚が「秋めく」ということなのでしょう。そのような意味では「新涼」という季語と、少し似ているところがあります。

しかし「暑し・涼し(夏)」から「秋暑し・涼新た(秋)」への移行が「暑さ/涼しさ」という体感温度のほうに重心がのっているとするなら、「秋めく」はもっと雰囲気的なものまで含めて、包括的な季節の変化に重きがあるということになるでしょうか。

俳句をはじめたばかりのころは、しばしば「秋っぽいもの」に「秋めく」という季語を使ってしまうことがあります。たとえば、半袖が七部丈になったとか。しかしそれは秋めいた「結果」なので、あまりいい俳句とはならないでしょう。その意味では、「めく」系の季語は、「なんとなく」感がとても大事。

秋めくやあゝした雲の出かゝれば   池内たけし

「ああした」ってどんな雲やねん、というツッコミをしたくなる気持ちの反面、じわじわと「秋めく」感が広がってくる一句です。

【関連季語】秋暑し(秋)、新涼(秋)、秋深し(秋)など


【秋めく(上五)】
秋めくや貝ばかりなる土産店 久米正雄
秋めくやあゝした雲の出かゝれば 池内たけし
秋めくや焼鳥を食ふひとの恋 石田波郷
秋めくや肌白かりし母のこと 飯田龍太
秋めくや縁に出て書く農日記 上村占魚
秋めくやブックエンドの人魚さへ 川口重美
秋めくと思ふ貝煮る音の中 岡本眸
秋めくや鬼界ケ島を去らぬ雲 福永耕二
秋めくや一つ出てゐる貸ボート 高橋悦男
秋めくや鮑のわたの暗みどり 高橋睦郎

【秋めく(中七)】
天草の沖や秋めく波がしら 今井杏太郎
洗濯を終へて秋めくおばあさん  宮本佳世乃

【秋めく(下五)】
大阪に曵き来し影も秋めきぬ 加藤楸邨

【ほかの季語ありのパターン】
箒木に秋めく霧の一夜かな  西島麦南
高原の秋めく日ざし小雷 星野立子
秋めきて白桃を喰ふ横臥せに 森 澄雄
炎天のすでに秋めく己が影 高橋悦男


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

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