夏の季語

【夏の季語】百合

【夏の季語=仲夏(6月)】百合

夏になると、ラッパ形の香り高い花を咲かせる花。仏花にも使われる。

「牡丹百合」は「チューリップ」の別称で春の季語。「稚児百合」もまた、春の季語。

その香り高さから、ヨーロッパでは、純粋で豊かな結婚と子孫繁栄を願う象徴として使われてきた。中世になると、純粋さや豊穣を表わすだけでなく、「聖母マリア」、「フランス王国」、「死」を表すのにも使われてきた。


【百合(上五)】
百合の花超然として低からず 高屋窓秋
百合の香と小過去吾を眠らせず  相馬遷子
百合の前ひろびろとしてぬかるめり 波多野爽波
百合剪つてくれし少年尼僧めく 中村苑子
百合一輪フェンスに茎と隔たれて 花谷 清
姥百合の揺れて真昼の生欠伸  八田夕刈

【百合(中七)】
開くかな百合は涙を拭いてから 折笠美秋
日蝕の白百合が喉みせている  澁谷道
病む夜の百合の重さを一人吸う 対馬康子
ぐつたりと百合ありテレビより歓声  奥坂まや
錯乱といふもの百合の花の底  西原天気

【百合(下五)】
攀づるとき吾子と息あふ深山百合  能村登四郎
双腕はさびしき岬百合を抱く 正木ゆう子
自らの蘂に汚れて百合ひらく  藺草慶子
不自然な川不自然な小鬼百合  橋本直
地下街の浅き深きを百合の花  岡田由季

【ほかの季語と】
蜘蛛の糸一筋よぎる百合の前  高野素十
巨き百合なり冷房の中心に  西東三鬼
海百合のかひなの永し冬の戀  恩田侑布子


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