【夏の季語=晩夏(7月)】蟬(蝉)
夏の風物詩のひとつ。
芭蕉の〈閑さや岩にしみいる蟬の声〉のように、江戸期から夏の題として詠まれてきた。
季語としても「蟬時雨」や「空蟬」など、ヴァリエーションは多い。
セミは、世界には約1600種、日本にはそのうちの約30種が生息する。
盛夏に日本各地で聞かれるが、夏の季語としてはアブラゼミやクマゼミを指し、「つくつくぼうし」(「法師蟬」)や「蜩」(「かなかな」)は秋の季語とされる。「蟬生まる」は、仲夏の季語。
成虫の寿命は、1週間程度と言われることもあるが、実際はもっと長いと考えられている。
「蝉」は「蟬」の新字体にあたる。
人名用漢字の新字旧字 第138回 「蝉」と「蟬」(筆者: 安岡 孝一)
【蟬(上五)】
蟬かなしベッドにすがる子を見れば 石田波郷
【蟬(中七)】
鳴き了る蟬のごと吾子寝入りつつ 篠原梵
さかしまにとまる蟬なし天動く 三橋敏雄
どことなく遠いよ蟬の鳴く村は 今井杏太郎
あかつきを告げにし蟬のゆふべに死 鷹羽狩行
【蟬(下五)】
しのび音の咽び音となり夜の蟬 三橋鷹女
ふたたびは帰らず深き蟬の穴 阿波野青畝