【秋の季語】野分

【秋の季語=仲秋(9月)】野分

台風」の昔の呼び方で、源氏物語や枕草子にも登場する。「のわき」と読む。

源氏において「野分」は五十四帖の巻名のひとつともなっている。

芭蕉野分して盥に雨を聞く夜哉 芭蕉

は、芭蕉の句としてかなり有名。

夕方の暴風雨を「夕野分」、台風が一段落したあとのことを「野分あと」、晴れていれば「野分晴」と呼ぶ。


【野分(上五)】
野分跡倒れし木々も皆仏 高浜虚子
野分吾が鼻孔を出でて遊ぶかな 永田耕衣
野分禍のまづ御手洗に水通ず 波多野爽波
野分より眠りに入りて夢多し 細見綾子
野分来る蝿取紙のうらおもて 西野文代

【野分(中七)】
潮の香や野分のあとの浜畠 齋藤俳小星
汽車逃げてゆくごとし野分追ふごとし 目迫秩父
あをあをと野分のあとの余り風 今井杏太郎
わが骨を吹きゐる野分と思ひけり 齋藤愼爾
おのが手も見つつ野分の犬撫でる  大石雄鬼

【野分(下五)】
鶏の空時つくる野分かな 高濱虚子
あづき煮る火もとさみしき野分かな 横光利一
おとろへし親におどろく野分かな 原裕
マロニエに住み馴れきしが野分かな 小池文子
愛断たむこころ一途に野分中 鷲谷七菜子
音立てて馬柵噛む馬や野分晴れ 皆川盤水
ひらがなのごとき雲ゆく野分あと 藤木倶子
ゴミ箱の底を叩いて野分中  清水哲男
海よりも川のふくらむ野分あと 伊藤宇太子
前をゆく私が野分へとむかふ 鴇田智哉
しづかにも家を揺らして野分かな 若杉朋哉

【ほかの季語と】
鶏頭ノマダイトケナキ野分カナ 正岡子規


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