「立夏」を迎えて、いよいよ夏が来たことを表すことば。
二十四節気のひとつでもある「立夏」と比べると、より日常的で「来た!」という実感が感じられるが、同時に〈春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山〉という持統天皇(『新古今集』夏・175)の一首も思い出されてくる。
より口語的に「夏が来る」や「夏始まる」という言葉を用いることもある。
【夏来る(上五)】
夏来たる市井無頼の青眼鏡 佐藤雅男
【夏来る(中七)】
螫さるべき食はるべき夏来りけり 相生垣瓜人
【夏来る(下五)】
しまうまがシャツ着て跳ねて夏来る 富安風生
おそるべき君等の乳房夏来る 西東三鬼
毒消し飲むやわが詩多産の夏来る 中村草田男
プラタナス夜もみどりなる夏は来ぬ 石田波郷