目薬の看板の目はどちらの目
古今亭志ん生
YouTubeには色んな動画が落ちている。
川端と三島と伊藤整の鼎談やら、フーコーとチョムスキーの対談やら、果ては資本主義を料理するジジェクまで出てくる。
今は亡き作家の肉声を知ることも出来る。与謝野晶子、折口信夫、また自句を朗読する虚子なんかもあって、みんながみんな、なんともぬぼーっと読んでいるのがよくて、BGMの替わりに聞き流している。
冒頭の志ん生の川柳は、談志の思い出話で知った。目薬の句だけあって、目の付け所がシャープである。
同じく志ん生の句で、「ふんどしでズボンを履くとこぶが出来」というのもあるそうだ。この「〜で〜すると〜になる」といった至極ダラダラとした文体もどこか間が抜けていて、変にフィットしていて面白い。「借りのある人が湯ぶねの中にいる」というのもあるそうだが、これは人情味がある。
(安里琉太)
【執筆者プロフィール】
安里琉太(あさと・りゅうた)
1994年沖縄県生まれ。「銀化」「群青」「滸」同人。句集に『式日』(左右社・2020年)。 同書により、第44回俳人協会新人賞。
【安里琉太のバックナンバー】
>>〔9〕こぼれたるミルクをしんとぬぐふとき天上天下花野なるべし 水原紫苑
>>〔8〕短日のかかるところにふとをりて 清崎敏郎
>>〔7〕GAFA世界わがバ美肉のウマ逃げよ 関悦史
>>〔6〕生きるの大好き冬のはじめが春に似て 池田澄子
>>〔5〕青年鹿を愛せり嵐の斜面にて 金子兜太
>>〔4〕ここまでは来たよとモアイ置いていく 大川博幸
>>〔3〕昼ごろより時の感じ既に無くなりて樹立のなかに歩みをとどむ 佐藤佐太郎
>>〔2〕魚卵たべ九月些か悔いありぬ 八田木枯
>>〔1〕松風や俎に置く落霜紅 森澄雄
【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】