ハイクノミカタ

GAFA世界わがバ美肉のウマ逃げよ 関悦史


GAFA世界わがバ美肉のウマ逃げよ

関悦史


『俳壇』12月号の年末アンケートに答えた。

四つの質問があって、その中の「一年の成果と今後の抱負」というのには少し困ったのだけれど(たぶん皆困った)、やはり良い句集や詩集を読めたのが最大の収穫だったように思う。そうした読書体験の中でも、石松佳の『針葉樹林』がよかった。連なって行く言葉が身を捩りながら、意味を掴まんとする読者の掌を軽やかにすり抜けてゆく。ここ最近でも、俗っぽくて特別疲れた日の終わりには、雑事をすべて済ませてひらく一冊だ。

さて、同アンケートで、関が自選に挙げていたのがこの句だ。初出はたぶんこちら。
https://mambaweb29.blogspot.com/2021/06/blog-post_50.html

句に註があるけれど、その言葉の周辺のイメージも掴みたい。「GAFA」については、こちらを参照されたい。
https://toyokeizai.net/articles/amp/229925?display=b&amp_event=read-body

「バ美肉」については、こちらを参照されたい。NHKが言っているの定義なので間違いないし、なにより面白い番組だった。
https://www.google.co.jp/amp/s/www.nhk.jp/p/nehorin/ts/N1G2WK6QW5/episode/te/ZPLR4L759G/

君はセカイの外に帰省し無色の町 福田若之」と並べて見ると、「世界」の向かう先が全く違うことを思わされる。関の句には、「バ美肉」にまつわる「受肉」という言葉の印象がすこぶる効いてくる感じがある。なんかちょっと「世界」に嫌な感じの鮮明さがある。いや、いい意味で。

そういえば、今年は「ウマ娘」というアニメが流行った。全然アニメなんか見なかった友人も、久々に会うと「ウマ娘」が面白いと言っていて、終いにはアニメの影響で本当の競馬を始めたらしく、過去の名馬の引退試合をYouTubeで検索しては号泣しているそうだ。模造から入ってオリジナルで号泣だもんな。ボードリヤールさん、この世はハイパーリアルが過ぎます。

同号には、永山智郎君と網倉朔太郎君の句も載っていた。この二人が、その昔、俳句甲子園で同じチームで戦っていたことを思い出した。

確かこのチームはかなり強くて、地方予選から全国で優勝するまでで、たしか一回くらいしか負けていなかったのではなかったか。一試合ということではない。試合中の先鋒戦とか中堅戦とか大将戦とか、それを一本落としただけということである。

なんかそういう話をあの時に聞いた気がするのだけれど、お手隙の人は公式作品集を捲って明らかにしてもらいたい。

なお、後日、西東三鬼に「青高原わが変身の裸馬逃げよ」があったことを思い出したので、追記しておく。関の句の「世界」の嫌な感じの鮮明さが、より面白い働きをしていると思った。

(安里琉太)


【執筆者プロフィール】
安里琉太(あさと・りゅうた)
1994年沖縄県生まれ。「銀化」「群青」「」同人。句集に『式日』(左右社・2020年)。 同書により、第44回俳人協会新人賞



安里琉太のバックナンバー】
>>〔6〕生きるの大好き冬のはじめが春に似て 池田澄子
>>〔5〕青年鹿を愛せり嵐の斜面にて  金子兜太
>>〔4〕ここまでは来たよとモアイ置いていく 大川博幸
>>〔3〕昼ごろより時の感じ既に無くなりて樹立のなかに歩みをとどむ 佐藤佐太郎
>>〔2〕魚卵たべ九月些か悔いありぬ  八田木枯
>>〔1〕松風や俎に置く落霜紅      森澄雄


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 氷上と氷中同じ木のたましひ 板倉ケンタ【季語=氷(冬)】
  2. 春菊や料理教室みな男 仲谷あきら【季語=春菊(春)】
  3. 百合のある方と狐のゐる方と 小山玄紀
  4. 麦真青電柱脚を失へる 土岐錬太郎【季語=青麦(夏)】
  5. 時計屋の時計春の夜どれがほんと 久保田万太郎【季語=春の夜(春)…
  6. ネックレスかすかに金や花を仰ぐ 今井千鶴子【季語=花(春)】
  7. 切腹をしたことがない腹を撫で 土橋螢
  8. 鷹鳩と化して大いに恋をせよ 仙田洋子【季語=鷹鳩と化す(春)】

おすすめ記事

  1. 【秋の季語】渡り鳥
  2. 【冬の季語】綿虫
  3. 「野崎海芋のたべる歳時記」野菜の冷製テリーヌ
  4. 夏至白夜濤たちしらむ漁港かな 飯田蛇笏【季語=夏至白夜(夏)】
  5. 秋めくや焼鳥を食ふひとの恋 石田波郷【季語=秋めく(秋)】
  6. 薄氷の吹かれて端の重なれる 深見けん二【季語=薄氷(冬)】
  7. 「パリ子育て俳句さんぽ」【3月19日配信分】
  8. 神保町に銀漢亭があったころ【第76回】種谷良二
  9. 「野崎海芋のたべる歳時記」わが家のクスクス
  10. 春の雁うすうす果てし旅の恋 小林康治【季語=春の雁(春)】

Pickup記事

  1. コンビニの枇杷って輪郭だけ 原ゆき
  2. 扇子低く使ひぬ夫に女秘書 藤田直子【季語=扇子(夏)】
  3. 枯野ゆく最も遠き灯に魅かれ 鷹羽狩行【季語=枯野(冬)】
  4. 晴れ曇りおほよそ曇りつつじ燃ゆ 篠田悌二郎【季語=躑躅(春)】
  5. あつ雉子あつ人だちふ目が合うて 西野文代【季語=雉子(春)】
  6. 蟷螂にコップ被せて閉じ込むる 藤田哲史【季語=蟷螂(秋)】
  7. さしあたり坐つてゐるか鵆見て 飯島晴子【季語=鵆(冬)】 
  8. 【連載】加島正浩「震災俳句を読み直す」第7回
  9. 田に人のゐるやすらぎに春の雲 宇佐美魚目【季語=春の雲(春)】
  10. クリスマスイヴの始る厨房よ    千原草之【季語=クリスマス(冬)】
PAGE TOP