【秋の季語=仲秋(9月)】曼珠沙華
「秋彼岸」のころになると、まっすぐにのび太細い茎から、赤い炎のような特徴的な花を咲かせる。
たまに白い曼珠沙華もあり。「彼岸花」ないしは「死人花」などとも。
俳句の世界で誰もが知っている句といえば、山口誓子の〈つきぬけて天上の紺曼珠沙華〉や、金子兜太の〈曼珠沙華どれも腹出し秩父の子〉あたりでしょうか。
【曼珠沙華(上五)】
曼珠沙華散るや赤きに耐へかねて 野見山朱鳥
曼珠沙華跨いでふぐり赫(かつ)とせり 能村登四郎
曼珠沙華雨の一ト日を経たる色 西村和子
曼珠沙華すつかり枯れて地に刺さる 今井 豊
曼珠沙華孤心の奥に孤心あり 中岡毅雄
曼珠沙華傾くまいとしてをりぬ 橋本小たか
【曼珠沙華(下五)】
夜へつづく雲の量感曼珠沙華 能村登四郎
九十の恋かや白き曼珠沙華 文挾夫佐恵
長命の怖ろしきまで曼珠沙華 渡部よね
あかあかとあかあかあかとまんじゆさげ 角川春樹
生涯の恋の数ほど曼珠沙華 大西泰世
仔狐が忘れていつた曼珠沙華 坂本宮尾
ずぶ濡れの電車が着きぬ曼珠沙華 奥坂まや
いつせいに振り向かれたり曼珠沙華 柏柳明子