曼珠沙華傾くまいとしてをりぬ 橋本小たか【季語=曼珠沙華(秋)】


曼珠沙華傾くまいとしてをりぬ

橋本小たか


曼珠沙華が傾いてたまるものかとまっすぐな体勢を保っている、という句。

曼珠沙華はすっと伸びた緑色の茎の上にボリューミーな赤い花が咲くので、異様なまっすぐさに目がいく。それを「傾くまいとしてをりぬ」と捉えたことはなかったし、発見に納得した。曼珠沙華の一本一本にそのような強い意志があると考えるとかなり怖い。曼珠沙華という花のイメージに合っている。

今年は曼珠沙華が遅い。彼岸をとうに過ぎたいまごろ咲いているところもあるだろう。

掲句は橋本小たかさん(「円座」「秋草」)の第一句集『鋏』より。

いい句が多いので、最近よく読んでいる。

秋の句だと〈雨のこと忘れて雨の桔梗見る〉の素直さ、〈これ以上近づけば飛ぶばつたかな〉の発見、〈萩寺やねむくなるほど雨やどり〉のキュートさに抜群に惹かれる。

句集のあとがきにはこうある。

「素十と爽波はとりわけ何べんも読んだ。しかし、素十の鮮明、爽波の自在には遠く及ばない。ま、いっか。と句集を出すことにした。」

さっぱりしていて素敵だ。

千野千佳


【執筆者プロフィール】
千野千佳(ちの・ちか)
1984年 新潟県生まれ。
2016年 作句をはじめる。堀本裕樹氏に師事。
2018年 「蒼海」立ち上げとともに入会。
2021年 第2回蒼海賞受賞
2023年 第11回星野立子新人賞受賞


2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓



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