寝ようかと思うてすごす夜長かな
若杉朋哉
そろそろ寝る時間だ、寝なくてはと思いつつ、秋の夜長を過ごしているという句。まるで自分のことを言われているようだ。ふっと笑えて、嬉しくなる。
9月3日(火)、わたしはそわそわとして仕事中も落ち着きがなく、食欲もなかった。応募していた角川俳句賞の結果が今日あたり発表されるからだ。わたしに受賞の知らせの電話がくることはなく、X(旧Twitter)での受賞者決定の速報もなかった。
夜、岡田一実さんがXで「「うちなる全き読者を育てる」というのが、俳句を続けている楽しさです。この世の中、すぐに競争や勝負に煽るところがありますが、それとは別の豊かさもあると、私は思っています……。」(一部抜粋)とポストされた。気持ちが落ち着いた。
9月4日(水)、小澤實さんがXで「昨日、第70回角川俳句賞選考会でした。(中略)決定後、編集長が受賞者の方に電話していましたが、通じませんでした。(中略)通じたかなあ。」とポストされた。そうかだめだったかと思った。18時にXで速報がでて、若杉朋哉さんの「熊ン蜂」が第70回角川俳句賞を受賞したと知った。
わたしは若杉さんの俳句が好きだ。俳句が作れないときは、若杉さんの句集を読む。俳句はシンプルに素直に詠めばいいのだという気持ちになる。
若杉さんが受賞されたと知り、わたしはとても嬉しかった。角川俳句賞がもともと好きだったけど、さらに好きになった。
『朋哉句抄 2012―2021』(私家版)所収
(千野千佳)
【執筆者プロフィール】
千野千佳(ちの・ちか)
1984年 新潟県生まれ。
2016年 作句をはじめる。堀本裕樹氏に師事。
2018年 「蒼海」立ち上げとともに入会。
2021年 第2回蒼海賞受賞
2023年 第11回星野立子新人賞受賞
2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓
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