
火の中に草立ち上がる野焼かな
亀井雉子男
この時期になると俳人の間で話題になるのが野焼。見に行く、行こう、行った、見たい、いつかは、などひとしきり話はするが恥ずかしながら私はまだ実物を見たことがない。見たことがない季語の句について書くことには異論があるだろう。その代わりにというわけではないが今年の野焼情報を掲載することでご容赦いただきたい。
◎詳細はリンク先にてご確認ください。
終了したもの、一般公開していないものは割愛しました。※
【2026年】
■渡良瀬遊水地 ヨシ焼き 3/7(土)
■仙石原すすき草原 山焼き 3/9(月)
■阿蘇の野焼き 3/7(土)ほか
火の中に草立ち上がる野焼かな
ろうそくの炎が消える直前に大きく燃え上がるように、草も燃え果てる直前には立ち上がるのか…とも思ったが動画を見てみるとどうやらそうではない。炎の勢いに巻き込まれて立ち上がるのだ。遠目で見ているわけではないことがわかる。
野焼では炎の激しさや滅びを思わせる句がまずは思い浮かぶが、掲句は炎の激しさを感じさせながら同じ滅びでも激しさをもって描いている。野焼を見たいと強く思わせる一句である。
作者は俳誌「四万十」主宰で「鶴」同人。句集タイトルは〈朝顔の紺いつまでも波郷弟子〉からとっている。もともとは〈戻り来し恋猫われに近づかず〉をレベッカの「フレンズ」と共に語るつもりだったが先々週も猫だったので本文上の紹介にとどめることに。〈子規庵の縁側に春惜しみけり〉〈簡単な罠にかかりし狸かな〉も好きな句。
※確認できた範囲の情報です。
大室山山焼き(静岡)、平尾台野焼き(福岡)は終了あるいは時期違いとなっています。生石高原(和歌山)の山焼きは一般客の見学が禁止されています。坊ガツル湿原の野焼き(大分)は日程を特定できず。おそらく一般公開していません。対馬野焼き(長崎)は締め切り終了?
取りこぼしている情報があったら教えてください!
(吉田林檎)
【執筆者プロフィール】
吉田林檎(よしだ・りんご)
昭和46年(1971)東京生まれ。平成20年(2008)に西村和子指導の「パラソル句会」に参加して俳句をはじめる。平成22年(2010)「知音」入会。平成25年(2013)「知音」同人、平成27年(2015)第3回星野立子賞新人賞受賞、平成28年(2016)第5回青炎賞(「知音」新人賞)を受賞。俳人協会会員。句集に『スカラ座』(ふらんす堂、2019年)。
【吉田林檎さんの句集『スカラ座』(ふらんす堂、2019年)はこちら ↓】

【吉田林檎のバックナンバー】
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>>〔191〕己が傷を舐めて終りぬ猫の恋 清水基吉
>>〔190〕ドッジボールずどんとバレンタインの日 なつはづき
>>〔189〕裏返へりては春の水らしくなり 山口昭男
>>〔188〕【林檎の本#6】川添愛、ふかわりょう『日本語界隈』
>>〔187〕焚火する声が大きくなつてゆく 廣瀬悦哉
>>〔186〕丹頂のくれなゐ黒き寒さかな 飯島晴子
>>〔185〕冬の月かたちあるもの照らしけり 福島せいぎ
>>〔184〕お降りといへる言葉も美しく 高野素十
>>〔183〕駅で飲むコーンスープや十二月 白井飛露
>>〔182〕しぐるるや駅に西口東口 安住敦
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>>〔180〕小春日や石を噛み居る赤蜻蛉 村上鬼城
>>〔179〕【林檎の本#5】『会話の0.2秒を言語学する』(新潮社、2025年)
>>〔178〕能登時雨見たさに来る雨男 森羽久衣
>>〔177〕掌に猫が手を置く冬日かな 対中いずみ
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>>〔175〕蛇口みな運動会の空を向く 堀切克洋
>>〔174〕うなじてふ寂しきところ稲光 栗林浩
>>〔173〕ぬかるみか葛かわからぬものを踏む 板倉ケンタ
>>〔172〕大鯉のぎいと廻りぬ秋の昼 岡井省二
>>〔171〕紙相撲かたんと釣瓶落しかな 金子敦
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>>〔168〕コスモスの風ぐせつけしまま生けて 和田華凛
>>〔167〕【林檎の本#4】『言の葉配色辞典』 (インプレス刊、2024年)
>>〔166〕山よりの日は金色に今年米 成田千空
>>〔165〕やはらかき土に出くはす螇蚸かな 遠藤容代
>>〔164〕どうどうと山雨が嬲る山紫陽花 長谷川かな女
>>〔163〕短夜をあくせくけぶる浅間哉 一茶
>>〔162〕蟬しぐれ麵に生姜の紅うつり 若林哲哉
>>〔161〕手のひらにまだ海匂ふ昼寝覚 阿部優子
>>〔160〕はらはらと水ふり落とし滝聳ゆ 桐山太志
>>〔159〕夏蝶や覆ひ被さる木々を抜け 潮見悠
>>〔158〕菖蒲園こんな地図でも辿り着き 西村麒麟
>>〔157〕夏の暮タイムマシンのあれば乗る 南十二国
>>〔156〕かきつばた日本語は舌なまけゐる 角谷昌子
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