【秋の季語=晩秋(10月)】新蕎麦
一般に、「新蕎麦」には夏と秋の2種類があるのでございまして。
春に種蒔き、夏に収穫したものは「夏新」、夏に種蒔き、秋に収穫したものが「秋新」。俳句でいう「新蕎麦」は「秋新」にあたります。
産地によって少しずつベストとなる収穫時期が違うものの、おおむね蕎麦の収穫時期は、10月から11月にかけて。とくに江戸っ子は、一日も早く初物を味わうことにこだわったので、完全に熟していない蕎麦の野生味を味わうことを「新蕎麦」という秋の季語で呼び習わしてきた経緯がありました。
現在では、収穫したばかりの(きちんと熟した)蕎麦の実でつくったそばを「新蕎麦」と呼ぶことが一般的。夏の太陽をたっぷりと浴びて育った新そばは、色も香りも喉越しもフレッシュ。
季語としては「走り蕎麦」「今年蕎麦」などと五音で呼ぶこともあり。
「蕎麦の花」「蕎麦刈」も同様に、秋の季語となっています。
【新蕎麦(上五)】
新蕎麦やむぐらの宿の根来椀 蕪村
新蕎麦を待ちて湯滝にうたれをり 水原秋櫻子
新蕎麦を待つに御岳の雨となる 宇咲冬男
新蕎麦のそば湯を棒のごとく注ぎ 鷹羽狩行
新蕎麦や狐狗狸さんを招きては 藤原月彦
新蕎麦や全部全部嘘じゃないよ南無 佐藤智子
【新蕎麦(中七)】
地獄絵図見て新蕎麦を啜るなり 長嶺千晶
【新蕎麦(下五)】