冬の季語

【冬の季語】十一月

【冬の季語=初冬(11月)】十一月

【解説】現在の11月は、陰暦の「神無月」。諸国の神々が、一年に一度の「会議」のために出雲に行ってしまうから、俳句では「神の留守」なんていう言い方もありますが、急に神様がいなくなってしまったかのように、急に寒くなったりする時期、それが11月。

現在の暦では、11月7日、8日ごろが「立冬」にあたります。立冬は、太陽の角度(つまりはおおよその日照時間)に応じて一年を24等分した「二十四節気」のうちの19番目。つまり「小雪」、「大雪」そして「冬至」に向けてと、日が短くなっていく月でもあります。

11月は、歌舞伎が「吉例顔見世大歌舞伎」を催す月でもあります。江戸時代の歌舞伎役者は芝居小屋と1年契約で、11月から翌年10月までが一年度。したがって、旧暦11月の興行に華やかにお披露目するところから「顔見世月(かおみせづき)」とも言われていました。現在の12月に相当するわけですが、松竹では東京・銀座の歌舞伎座で毎年11月に「顔見世」を、京都南座では12月に「顔見世」を行っています。

11月15日は「七五三」。七五三は、氏神様などに出向き、子供の健やかな成長を感謝、祈願する行事で、明治時代に庶民にも広まりましたが、もともとは、子供の死亡率の高かった室町時代にはじまったもの。フォトジェニックなイベントなので、子供に和装をさせる口実として、現在も行われていますね。当然、この「11月15日」は、旧暦では満月だったわけですが、この日は旧暦の鬼も出歩かぬ「二十八宿の鬼宿日(にじゅうはっしゅくのきしゅくにち)」。そんなわけで縁起をかつぐ行事が行われてきたわけです。

あと、関東圏に住む俳人が楽しみにしているのが「酉の市」。俳句をやっていなければ、酉の市など知らなかった…という声はよく聞きます。「酉の市」は、鷲神社、酉の寺、大鳥神社など「鷲」や「鳥」にちなむ寺社の年中行事。露店が立ち並び、威勢よく手締めして「熊手」を売る祭の賑わいは、11月の風物詩ですね。通常は「一の酉」「二の酉」までですが、「三の酉」がある年は火事が多くなるのだとか(酉の日は12日ごとに回ってくる)。

急に寒くなって木々が葉を落とし、秋の花々が色を失っていく時期だからこそ、人が集まって、いろんなイベントを開催したり、健康や商売繁盛を願うという一面も、きっとあるのでしょう。

もっとも、酉の市はこれも旧暦11月の行事ですから(顔見世と同じように)本当はもっと寒くなってからやっていたわけです。其角に「春をまつことのはじめや酉の市」という句があるように、現在の12月に当たる寒さは、まさに「春を待つ」ということで、年末から新年という区切りに連なるものだったはずです。それが今では、どちらかというと「芸術の秋」「行楽の秋」のようなイベント性のほうとも、つながっているようにも思います。

【関連季語】立冬、初冬、神無月、冬めく、初霜、酉の市など。


【十一月(上五)】
十一月枯れゆくは華咲くごとく 平井照敏
十一月孔雀の首が日まみれよ 金原まさ子
十一月白い船来るどなたかしら 世古諏訪
十一月自分の臍は上から見る 小川軽舟

【十一月(中七)】
余日なき十一月の予定表 星野立子
醜松の十一月を水漬ける 齋藤玄
あたたかき十一月もすみにけり 中村草田男
あたゝかき十一月もすみにけり 中村草田男
あたゝかき十一月もすみにけり 中村草田男
峠見ゆ十一月のむなしさに 細見綾子
墨すつて十一月の卓の上 橋本榮治
石蕗の黄に十一月はしづかな月 後藤比奈夫
謙虚なる十一月を愛すなり 遠藤梧逸
船のごと十一月の芝居小屋 矢島惠
帽子買う十一月の耳をたて 岸本マチ子
火に近く十一月の柱かな 森賀まり
COVID-19十一月の黒いくれよん 瀬戸正洋
幽々と十一月の化石燃ゆ 犬星星人

【十一月(下五)】
少女の素足路地へすつ飛ぶ十一月 能村登四郎
新しきナイフとフォーク十一月 川崎展宏
年寄にひととせ迅し十一月 辻田克巳

【十一月の雨】
雨の十一月林檎灯あつめ前夜祭 古沢太穂
ベッド組み立てて十一月の雨 皆吉司
からまつに十一月の雨の音 野中亮介

【十一月の空】
青色の絵具十一月の空 林浩世
かたくなな十一月の空がある 櫂未知子 

【十一月の月】
信濃全山十一月の月照らす 桂信子

【十一月の水】
貌うつす十一月の水の張り 桂信子

【十一月の木】
武蔵野は十一月の欅かな 松根東洋城
光まとひて十一月の枯木ども 相馬遷子
からまつの十一月の林かな 今井杏太郎
猫のぼる十一月のさるすべり 青柳志解樹

【十一月の花】
この国の十一月は椿咲く 高野素十 
今日よりは十一月の石蕗の花 高木晴子
みせばやの花紅ふかく十一月 山口青邨
詩の湧きつぐことが詩十一月の薔薇 中村草田男

【十一月の船】
十一月の船落ちてゐる騙し舟 攝津幸彦

【十一月六日】
十一月六日は雨の親しかり 島谷征良
十一月六日を記す雨とのみ 手塚美佐

【十一月二十五日】
虚子に問ふ十一月二十五日のこと如何に 川崎展宏


  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 【秋の季語】夜長/長き夜(よ) 夜の長し 夜長人 夜長酒
  2. 【春の季語】猫の子
  3. 【夏の季語】キャンプ/テント バンガロー キャンプ村 キャンプ場…
  4. 【春の季語】葱坊主
  5. 【夏の季語】閻魔詣/閻魔 閻王 宵閻魔 閻魔帳
  6. 【夏の季語】日傘
  7. 【冬の季語】梅早し
  8. 【夏の季語】紫陽花

おすすめ記事

  1. 【春の季語】蝶生る
  2. 【春の季語】落椿
  3. 鳥帰るいづこの空もさびしからむに 安住敦【季語=鳥帰る(春)】
  4. 【書評】中西夕紀 第4句集『くれなゐ』(本阿弥書店、2020年)
  5. 洗顔のあとに夜明やほととぎす 森賀まり【季語=ほととぎす(夏)】
  6. 【第7回】ラジオ・ポクリット(ゲスト:篠崎央子さん・飯田冬眞さん)【後編】
  7. 【冬の季語】蕪
  8. 【第2回】重慶便り/折勝家鴨
  9. 神保町に銀漢亭があったころ【第12回】佐怒賀正美
  10. 「野崎海芋のたべる歳時記」鰆のエスカルゴバター焼き

Pickup記事

  1. スタールビー海溝を曳く琴騒の 八木三日女
  2. マフラーを巻いてやる少し絞めてやる 柴田佐知子【季語=マフラー(冬)】
  3. 妹は滝の扉を恣 小山玄紀【季語=滝(夏)】
  4. 【俳句公募のご案内】「十年目の今、東日本大震災句集 わたしの一句」【12月15日締切】
  5. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第54回】 宗谷海峡と山口誓子
  6. 夏帯にほのかな浮気心かな 吉屋信子【季語=夏帯(夏)】
  7. 「野崎海芋のたべる歳時記」わが家のクスクス
  8. 赤ばかり咲いて淋しき牡丹かな 稲畑汀子【季語=牡丹(夏)】
  9. 螢とび疑ひぶかき親の箸 飯島晴子【季語=蛍(夏)】
  10. 【秋の季語】十六夜
PAGE TOP