火ぶくれの地球の只中に日傘 馬場叶羽【季語=日傘(夏)】


火ぶくれの地球の只中に日傘

馬場叶羽


うだるような暑さが続いた今夏。専門家は、地球の温暖化などで、高温が当たり前となる「ニューノーマル」のフェーズに入ったかもしれないと指摘。掲出の句は、そんな地球のありさまを「火ぶくれ」と表現した。危うい星のうえに立つ人類。日傘をさして穏やかに過ごせる日は、いつまで続くのであろうか。

馬場(ばば)叶羽(かなう)さんは、2004年生まれの大学二年生。現在、関西俳句会「ふらここ」所属。小学一年生から俳句を始め、第24・25回「俳句甲子園」全国大会出場、第45回全国高校総合文化祭 愛媛県代表などの経歴をもつ。ほかに<祖父の眼は透明な森シクラメン>、<山霞人は小さな墓を置き>、<夏きざす窓やパジャマは頼りない>、<おおかみに十指大きく秋の雪>、<おでん食う猫の猫たるゆえんとは>などの作品。

「大人が太刀打ちできない感受性」と評したのは、俳人の夏井いつきさん。叶羽さんは、2019年に「プレバト!!」(毎日放送、8月15日)に出演。また、いつきさんとローゼン千津さんの共著『五七五と出会った子供たち』(春陽堂書店、2024)にも取り上げられた。

柿衞(かきもり)文庫(兵庫県伊丹市)に「俳句ラボ」という講座があった。若手俳人が、49歳以下の受講生に、作句や鑑賞の方法を教えるというもの。私がその講師の一人として招かれたのは、2019年度から2021年度のことで、叶羽さんは実はその受講生であった。月に一回ほど十五人前後が集まり、句会や討論を行っていた。

「俳句甲子園」への出場が小学生からの夢であった同氏は、地元の大阪を離れて伯方島(愛媛県今治市)の高校に進学。どうせなら開催地の愛媛で、徹底して努力したいと考えたのだ。季題への理解を深めるため、自然豊かな伯方島の高校を志望し、柿衞文庫の職員を通して合格の知らせを届けてくれた。今から四年以上も前のことである。

親元を離れて「俳句留学」をしていた彼女を目にしたのは、第25回「俳句甲子園」全国大会のとき。私は立教池袋高校の指導者として松山を訪れていた。舞台の壇上で句を語る叶羽さんは、見違えるほど立派になっていて、「俳句留学」でのその挑戦の日々を思った。

先日、第27回「俳句甲子園」全国大会が閉会。今年もそれぞれに、さまざまな物語があったことであろう。部活動の現場に立ち、改めて思うのは、人は自然に育っていく面も多分にあるということ。歩みゆくもの、育ちゆくものに、あたたかい眼差しを向けられる一人でありたいと思う。

進藤剛至


【執筆者プロフィール】
進藤剛至(しんどう・たけし)
1988年、兵庫県芦屋市生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。稲畑汀子・稲畑廣太郎に師事。甲南高校在校中、第7回「俳句甲子園」で団体優勝。大学在学中は「慶大俳句」に所属。第25回日本伝統俳句協会新人賞、第10回鬼貫青春俳句大賞優秀賞受賞。俳誌「ホトトギス」同人、(公社)日本伝統俳句協会会員。共著に『現代俳句精鋭選集18』(東京四季出版)。2021年より立教池袋中学・高校文芸部を指導。



2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓



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