ハイクノミカタ

ゑんまさまきつといい子になりまする 西野文代【季語=閻魔詣(夏)】

ゑんまさまきつといい子になりまする  

西野文代 

季語は「閻魔詣」で、旧暦の1月16日と7月16日は、閻魔王の賽日。それぞれの前日は、1月15日(小正月)と7月15日(盆)という大事な祭日で、実家の行事にも参加できるようにと、「藪入り」(住み込みの奉公人や嫁いできた嫁が、実家へ帰る事ができる休日)になったそうだ。薮入りに際しては、主人が奉公人に着物や小遣いを与え、親元に送り出したというから、本人も嬉しかっただろうし、親も待ち待っていたはず。新暦ではそんなこと、すっかり忘れられているが、うだるような暑い夏の日、まだ小さな子供を連れて閻魔堂にお参りにいったのである。地獄の主神を前に、子供を大事に思う気持ちは、今も昔も変わらないが、旧暦の風習がすっかり忘れられてしまった現在だからこそのユーモアが、掲句のひらがな書きに表れているようだ。(堀切克洋)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 水喧嘩恋のもつれも加はりて 相島虚吼【季語=水喧嘩(夏)】
  2. えりんぎはえりんぎ松茸は松茸 後藤比奈夫【季語=松茸(秋)】
  3. 伊太利の毛布と聞けば寝つかれず 星野高士【季語=毛布(冬)】
  4. ロボットの手を拭いてやる秋灯下 杉山久子【季語=秋灯下(秋)】
  5. 宝くじ熊が二階に来る確率 岡野泰輔【季語=熊(冬)】
  6. おほぞらを剝ぎ落したる夕立かな 櫛部天思【季語=夕立(夏)】
  7. 節分の鬼に金棒てふ菓子も 後藤比奈夫【季語=節分(冬)】
  8. 雪折を振り返ることしかできず 瀬間陽子【季語=雪折(冬)】 

おすすめ記事

  1. 神保町に銀漢亭があったころ【第48回】松尾清隆
  2. 仔馬にも少し荷を付け時鳥 橋本鶏二【季語=時鳥(夏)】
  3. 【秋の季語】秋桜
  4. 「野崎海芋のたべる歳時記」ゼブラのガトー
  5. 【卵の俳句】
  6. ひるすぎの小屋を壊せばみなすすき 安井浩司【季語=すすき(秋)】
  7. 【春の季語】旧正月
  8. 春日差す俳句ポストに南京錠 本多遊子【季語=春日(春)】
  9. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第62回】 佐渡と岸田稚魚
  10. 生前の長湯の母を待つ暮春 三橋敏雄【季語=暮春(春)】

Pickup記事

  1. 服脱ぎてサンタクロースになるところ 堀切克洋【季語=サンタクロース(冬)】
  2. 同じ事を二本のレール思はざる 阿部青鞋
  3. 貝殻の内側光る秋思かな 山西雅子【季語=秋思(秋)】
  4. をどり字のごとく連れ立ち俳の秋 井口時男【季語=秋(秋)】
  5. 【#22】鍛冶屋とセイウチ
  6. 【結社推薦句】コンゲツノハイク【2021年3月分】
  7. 【春の季語】春塵
  8. 俳句おじさん雑談系ポッドキャスト「ほぼ週刊青木堀切」【#1】
  9. 【秋の季語】馬鈴薯/馬鈴薯 ばれいしよ
  10. 神保町に銀漢亭があったころ【第78回】脇本浩子
PAGE TOP