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ゑんまさまきつといい子になりまする 西野文代【季語=閻魔詣(夏)】

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ゑんまさまきつといい子になりまする  

西野文代 

季語は「閻魔詣」で、旧暦の1月16日と7月16日は、閻魔王の賽日。それぞれの前日は、1月15日(小正月)と7月15日(盆)という大事な祭日で、実家の行事にも参加できるようにと、「藪入り」(住み込みの奉公人や嫁いできた嫁が、実家へ帰る事ができる休日)になったそうだ。薮入りに際しては、主人が奉公人に着物や小遣いを与え、親元に送り出したというから、本人も嬉しかっただろうし、親も待ち待っていたはず。新暦ではそんなこと、すっかり忘れられているが、うだるような暑い夏の日、まだ小さな子供を連れて閻魔堂にお参りにいったのである。地獄の主神を前に、子供を大事に思う気持ちは、今も昔も変わらないが、旧暦の風習がすっかり忘れられてしまった現在だからこそのユーモアが、掲句のひらがな書きに表れているようだ。(堀切克洋)

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