【春の季語】虻

【春の季語=晩春(4月)】虻

「蠅」をひとまわり大きくしたような昆虫。漢字の「虻」と「蝱」は同字の異字体で、「蝱」が本字ともされる。
とくに「牛虻」のメスは、人間にもまとわりつき、吸血するため忌み嫌われる。一方で、花に飛来して蜜や花粉を食べる「花虻」のような種類もある。以下の写真はハナアブ。〈草枕虻を押へて寝覚めけり 路通〉のように江戸期から詠まれてきた題である。
秋以降も生き残っているものを「秋の虻」「冬の虻」と呼ぶ。


【虻(上五)】
虻とんで海のひかりにまぎれざる 高屋窓秋
虻つれて水辺をまはる老婆の午後 桂信子
頬の虻歩みつ打てり書に帰らん 金子兜太
牛虻よ牛の泪を知つてゐるか 永瀬十悟

【虻(中七)】
塚や四五疋虻の大唸り 村上鬼城
一身に虻引受けて樹下の牛 右城暮石
大空に唸れる虻を探しけり 松本たかし
よぼよぼの虻を看とらぬ地球哉 永田耕衣
母の背に居る高さ虻の来る高さ 中村草田男
工場地帯へ虻が先ゆく運河わたる 古沢太穂
一日よ虻とは知らず飛んでゐる 桑原三郎
秘湯なり纏はる虻と戦つて 矢島渚男
空中に虻とどまれり恋人来 小澤實

【虻(下五)】
老人の立つまでの間の虻の声 清水径子
西行を螫したるはなの虻なりし 角川春樹
婚期かな積まれた本の上に虻 宮崎斗士

【ほかの季語と】
われ蜂となり向日葵の中にゐる 野見山朱鳥
手の薔薇に蜂来れば我王の如し 中村草田男




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